魔王スサノオ降臨
第4章、一族の使命
Ⅰ、五百井(イオイ)一族
それで・・まさか・・その一族とは・・・
そうです、五百井家の一族です。
でも、少なくなったとは言え、まだ、五百井(イオイ)の血筋は残っていますよ。
それに、親戚からは聖徳太子様に付いていた宮大工と聞いていますが。
はい、五百井(イオイ)家の皆さんの子孫はまだまだおられますね。
では、月読命(ツクヨミ)様、何故わざわざ私に・・・
五百井(イオイ)一族とは言っても、その中でも血筋でいろいろ役割が変わってきます。
宮大工としての五百井(イオイ)一族、仏師としての五百井(イオイ)一族、そして神仏の使いとしての五百井(イオイ)一族です。
五百井(イオイ)一族で宮大工に従事していたのが8割を占め、後の仏師と神仏の使いが1割程ずつ程度でした。
その中の、神仏の使いとしての五百井(イオイ)一族が重要なのです。
そういえば、神仏・・・、何故神と仏が一緒にと思われるかもしれませんね。
神は日本固有、仏は外から日本に入ってこられた。
どの神、どの仏を信じるかは、人間自身が決めること。
しかし、人間界全体を加護するという時は、神も仏も同じ存在なのです。
神仏の使い、この仕事は、後の世に陰陽師(オンミョウジ)と言われています。
元々は、神仏の指示により、その指令を全うする者達のことでした。
魔界の者が襲ったのも、その陰陽師(オンミョウジ)達です。
奈良の時代には、まがいものの陰陽師(オンミョウジ)が大半を占めていました。
しかし、本当の陰陽師(オンミョウジ)の技量と資格を持つのは、五百井(イオイ)一族だけです。
更に言えば、五百井(イオイ)一族の直系の男子のみです。
陰陽師の血を引く殿方に男の子が産まれたら、その長男。
もし、女の子だけなら、その長女が産んだ男の子、それも長男のみです。
それ以外の血を引く一族の皆さんは陰陽師(オンミョウジ)にはなれません。
翔子さまは、お母様が長女、お母様の御兄弟は3人の妹様だけです。
でも、陰陽師(オンミョウジ)になるのは男子だけなのでしょう。
私は、女・・・
そ、それに、陰陽師(オンミョウジ)の血筋は戦国時代前に絶えたのではないですか。
はい、魔族も神々も、もう末裔の者はいないと思っていました。
しかし、翔子様のおじい様、お仕事は何をされていましたか?
お寺の僧侶だったと聞いています。
そうです、最後に残った五百井(イオイ)一族のご先祖は、魔族からの追手を避けるため、仏門に入られました。
仏の加護を受け、その姿を隠したのです。
そして、密かに子孫を残し続け、今の翔子様がおられます。
この地に移られる前、如意輪観世音菩薩(ニョイリインカンゼオンボサツ)様にお会いにならなければ、未だにわからなかったでしょう。
仏門とは関係の無い社会で生きておられる翔子様を見て、菩薩(ボサツ)様は驚かれました。
そして、日本国内では魔族の目が光っているので、外国、このベトナムの地に導かれたのです。
この地は仏教国、それも、他のアジアの国では珍しい、日本と同じ大乗仏教です。
翔子様をお守りするのにも、とても都合がよかったのです。
そうなんですか・・・
でも・・・
はい、先ほど言はれましたね、女性だと。
ホホホ、我々は神です、わかっていますよ。
今は女の方ですが、もともとは殿方ですわよね。
現在の姿はどうでもいいのです、五百井(イオイ)一族、それも陰陽師(オンミョウジ)の血をひくものであれば。
翔子様、あなた様がその最後の1人。
魔族を倒すことができる人間は、翔子様しかいないのです。