魔王スサノオ降臨

では、私、天照(アマテラス)から、闘いのための手助けになる道具を差し上げましょう。
これは、代々伝わる三種の神器。
  八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)
  八咫鏡(ヤタノカガミ) 
  草薙剣(クサナギノツルギ)
です。

八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)は、私の岩戸隠れの際に、玉造部(タマツクリベ)の祖神である、玉祖命(タマノオヤノミコト)が作り、榊の木に掛けたものです。
元々は、長い緒に繋いだ勾玉(マガタマ)でした。
神話における天孫降臨(テンソンコウリン)では、私の命を受け葦原の中つ国を治めるために高天原から日向国の高千穂峰へ天降(アマクダ)った、天孫の邇邇藝命(ニニギノミコト)に、三種の神器を持たしたとなっています。
しかし、この時の三種の神器の八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)は、私が後に玉祖命(タマノオヤノミコト)に新たに作らしたもの。
現在、皇居に現存するのは、天孫降臨(テンソンコウリン)の時の物です。

ここにある勾玉(マガタマ)は、岩戸隠れの際に榊の木に掛けられたものです。
3つに分けて、人間界で言うアクセサリーのようにしています。
常に、首にかけて、決して離さぬよう、いいですね。
この勾玉は、魔族の者からあなた達の気配を消して、あなた達の存在をわからないようにしてくれます。
これを外さなければ、魔界の者から発見されることはありません。
そして、万が一発見されて影の者の攻撃を受けても、跳ね返してくれます。

八咫鏡(ヤタノカガミ)は、私が岩戸隠れをした際に、作鏡連(カガミツクリノムラジ)らの祖神であった石凝姥命(イシコリドメ)が作ったものです。
しかし、天孫降臨(テンソンコウリン)の時の三種の神器の八咫鏡(ヤタノカガミ)は、勾玉(マガタマ)と同じく、私が後に石凝姥命(イシコリドメ)に新たに作らしたものでした。
岩戸隠れの際の鏡は、かなり朽ち果てて、所々が割れてしまっていましたので。
この伊勢神宮内宮で奉安されている私の御神体としての八咫鏡(ヤタノカガミ)は、天孫降臨(テンソンコウリン)の時の物です。

今回、元々の八咫鏡(ヤタノカガミ)の破片を集めて、これを作りました。
皆さんが言うと、コンパクトですね。
この鏡は、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した後、脱出の手助けをしてくれます。
コンパクトを開くと、あなた方がその時にいる施設の中から外に出るまでの通路を光で誘導します。
更に、誘導中は人間の目から皆さんの姿は見えません。
この後にお渡しする羽衣も、姿を隠すためですが、それだけです。
誘導中の皆さんは、磁界の狭間を進みますので、通路を阻むドアなどはそのまま、通り抜けられるのです。
外に出たら、光は消え普通のコンパクトに戻ります。

そして、3つ目の三種の神器、草薙剣(クサナギノツルギ)です。
神話では、須佐之男(スサノオ)が出雲・簸川上(ヒノカワカミ)で倒した八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から出てきた剣となっています。
天孫降臨(テンソンコウリン)の時の三種の神器の剣、その剣は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から出てきた剣そのものです。
しかし、1185年(元暦2年)の壇ノ浦の戦いで敗れた安徳天皇が、平家の舟から共に入水した際、草薙剣(クサナギノツルギ)も一緒に今の関門海峡の海底深くに沈んでしまいました。
その後、源氏が安徳天皇と一緒に沈んだ剣と勾玉(マガタマ)を発見します。
勾玉は箱に入っていたため浮き上がったもの、剣は当然浮いては来ないので、私が新たな剣を見つけやすい所に置いておいたのです。
現在、熱田神宮には、その時に私が置いた草薙剣(クサナギノツルギ)が祀られています。
そのどちらも、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から出てきた剣なのです。
そうなんです、大蛇(オロチ)の尾は8本、剣も8本だったんです。
神話では1本の様になっていますが、須佐之男(スサノオ)が私に献上したのは8本の剣でした。

ここにあるのは、その草薙剣(クサナギノツルギ)。
もちろん、復活寸前に姿を現した大蛇(オロチ)をしとめる剣です。
残り6本の剣を、高天原の刀鍛冶が3本に集約しました。
一撃で大蛇(オロチ)を倒さないと、復活を許してしまう。
ですので、攻撃力を更に強くさせました。
ただ、大蛇(オロチ)を倒したら、剣は砕け散ります。
砕けた剣は、気にせず、脱出してください。

そして、これは高天原の井戸の水と高天原の絹で編んだ羽衣(ハゴロモ)です。
羽衣(ハゴロモ)は今は小さいですが、両端を掴んで振ると大きくなります。
体を包めば、姿を消すことができるのです。
ただし、姿を消している時に声を発すると、羽衣(ハゴロモ)は消えて無くなりますので、御注意を。
井戸の水は、2通りの使い方があります。
1つは、ある者に近づき、頭に数滴振りかけると、その者の影のように移動できます。
センサーや熱感知のような機械にも反応せず、その者の後ろを影のように付いていけるのです。
施設へ潜入の際に、必要になるかと思います。
2つは、気を失った者の目を覚まさせます。
大蛇が体から飛び出た時、操られし者は気を失います。
急いでその者の顔に井戸の水を振りかけなさい。
すぐに気がつくことでしょう。

この巾着(キンチャク)も差し上げます。
全てをここに入れてお持ちなさい。
こんな小さな巾着(キンチャク)には入らない・・・ですか。
ホホホ、御安心を。
これは普通の巾着(キンチャク)ではありません。
いいですか、入れますよ。
ほら、きれいに全部の道具が入りましたでしょ。
出せばまた、元の大きさに戻ります。
そして、草薙剣(クサナギノツルギ)もこれに入れておけば、なんら問題なく飛行機に持ち込めるのですよ。

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