魔王スサノオ降臨

Ⅲ、我が心の斑鳩中宮寺


私が、皆さんにお渡しできる物、これが全てです。
疲れたでしょう、今日はこの伊勢で、ゆっくりと疲れを取るのです。
この社に宿泊してください。
神しか入れぬ温泉もあります。
明日は、奈良の斑鳩(イカルガ)に向かい、守護様とお会いしてくださいませ。
それでは、また・・・。

ママ、温泉ってこんなに気持ちいいものなの?
ううん、ここは神様専用の温泉。
ママが知ってる温泉と全然違うよ。
お湯が体をほぐしてくれるなんて、こんなの初めて。

翔子様、お湯はいかがでしたか?
あっ、アメノウズメ様、はい、とても気持ちよかったです。
人間界の温泉とは、全然違うのですね。
もちろんです、体の疲れだけでなく、病気も怪我も治してくれるのですよ。
この効能のうんと薄いのが、人間界の温泉です。
それでも人間は、病気を治すために湯治に行ったりしてますものね。
神の温泉なら、1度2度入れば、全てがよくなります。

これから、お食事を運びます。
これからは、3人水入らずでお過ごしください。
明朝、9時に出立しますので、それまでに御用意をお願します。
もしよろしければ、朝にもう一度温泉にお入りください。
完全に、なにも異常の無い体に戻りますので。
それでは、明日お迎えに伺いますね。

皆さん、おはようございます。
ウズメ様、おはようございます。
いかがでした、ゆっくりお休みになられましたか?
はい、ありがとうございました。
こんなに体が軽く感じたこと、何十年とありませんでした。
そうでしょう。
翔子様はこれまでの無理から、たくさんの病魔が体の中に巣くっていたのです。
それを知って、天照(アマテラス)様が昨日の1日を割いて、翔子様の体を治されたのですよ。
そうだったのですか・・・しかりとお礼を申し上げないといけませんね。
いえいえ、御気遣いを無用です。
さあ、出立しましょう。
月読命(ツクヨミ)様がお待ちです。

皆様、おはようございます。
まあ、翔子様、顔色がとっても良くなって。
ありがとうございました。
さあ、車に乗ってください。
今日はこのまま奈良の斑鳩(イカルガ)に向かいます。

その日のお昼すぎ。
皆さん、お疲れ様でした、法隆寺の参道に着きましたよ。
それでは、中宮寺に向かいましょう。
中宮寺は法隆寺の東側、夢殿のすぐ裏(北)側に位置している。
10分程歩くと、御門前に着く。
法隆寺からの観光客は、大抵が夢殿を見学後には法隆寺に引き返す。
しかし、中宮寺を知る者は、そのまま夢殿を回りこんで、如意輪観世音菩薩(ニョイリンカンゼオンボサツ)様を見学される。
今も、ちらほらと観光客の姿が見える。
観光客とは別の入り口から、月読命(ツクヨミ)の使いの者が中に入って行く。
直ぐの出て来られたのが1人の尼僧。
このお寺は、飛鳥時代の建立されて以来、尼寺を通してきた、唯一の寺である。
その尼僧が静かに月読命(ツクヨミ)の前に。
さ、こちらに。
ありがとうございます。
観光客の順路とは外れて、裏側の入り口に向かう。
尼僧の後に続き一同が、寺の内部に。
10帖程の和室に、月読命(ツクヨミ)と翔子・その娘の4人が通された。
ここで、しばらくお待ちください。

翔子様、いよいよ最後の準備ですね。
月読命(ツクヨミ)様、ここに観世音菩薩(カンゼオンボサツ)様がおいでになるのですか?
そうですよ、大日如来(ダイニチニョライ)様、薬師如来(ヤクシニョライ)様も御一緒にです。
私も、少々緊張致します。
15分程の後、静かに襖が開き、4人の前に人の様な、陽炎の様な3体が揃った。
待たせましたね、私が観世音菩薩(カンゼオンボサツ)です。
私の右が薬師如来(ヤクシニョライ)、左が大日如来(ダイニチニョライ)です。
お会いできて光栄です。
私の後ろの中央が、五百一(イオイ)族陰陽師(オンミョウジ)役最後の一人、山田翔子様です。
その両側に坐しておりますお二人が、娘様です。
よくぞ、決心なさいました。
神々、御仏一同、お礼を申し上げます。
もったいないお言葉でございます。
さて、もう御承知でしょうが、私達が皆さんの守護をさせていただきます。
ここで、皆さんと同体、すなわち、皆さんの体の中に入ります。
体が一つになると、守護の御仏とは言葉に出さなくても、頭の中だけでお話ができるようになるのです。
そして、魔物の攻撃からもお守りすることができます。
もう時間がありません、早速、同体の儀を行います。
少し、体と頭に違和感を覚えることと思いますが、直ぐに元に戻ります。
目をつむって、楽にしていてください。
では、私,観世音菩薩(カンゼオンボサツ)が翔子様、娘のコロン様には大日如来(ダイニチニョライ)、ミー様には薬師如来(ヤクシニョライ)です。
いいですか、始めますよ。
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