ナックルカーブに恋して
「あまり、ナックルカーブだけに拘らないようにしています。あくまで、僕が持っている球種の一つで、ストレートや他の変化球の方が有効であれば、それで勝負しますし。特別に意識はしていません。」
甲子園への思いや、技術面の質問など、スポーツライターのインタビューにしっかりと受け答えをする彼。
その姿を、一眼レフのデジカメで撮っていく。
誌面には甲子園の試合中の写真をメインで使う予定のため、今日はカメラマンは来ていない。
そのため、素人の私がシャッターを切るのだが、事前にカメラマンから撮り方を教わっていた。
順調にインタビューは進み、スポーツライターに替わって、咲さんからの質問が飛ぶ。
好きな食べ物や趣味など、プライベート中心の話題だ。
「女の子がお化粧して可愛くなることについて、どう思う?」
コスメ雑誌の編集者らしく、読者が気になりそうな質問をしていく。
「僕は、好きな人ならすっぴんでも、お化粧してても、どちらでも構わないですけど。やっぱり男ですから、好きな人がきれいになるのは、嬉しいですよ。」
頬を少しだけ染めて表情を緩ませた後、おもむろに彼は私に視線を向けた。