ナックルカーブに恋して

「お前らは?予定とかねーの?」

試合を真剣に見つめてメモを取っていたため、隣から掛けられた言葉が、一瞬何の話か理解できなかった。

「だから、倉木と。ほら、結婚とかさ。」

そこまでストレートに言われて、ようやく気づいた私は、苦笑いで返す。

「まあね、しばらくは無いかな。彼、新天地で頑張り始めたばっかりだしね。」
「まあ、確かにそうだけど。」
「私も、今いちばん仕事が楽しいし。」
「そんなこと言ってるうちに、ババアになっちまうぞ。」
「失礼な、まだアラサーにもなってないわ!」
「親父さんも、心配するんじゃね?」
「とりあえず、渡辺君のおかげで孫はだっこできそうだから、きっと何も言わないわよ。」

くだらないやり取りをしながら試合を見ていたら、桜川に先制のタイムリーが出た。
幸先良いスタートだ。スタンドも湧いている。

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