ナックルカーブに恋して
その後は、あくまで冷静に中立的な立場で試合を見た。
浜中君と違って、私は仕事中だ。

前評判通り、エースの後藤君のピッチングは見事だった。
ストレートはスピードはそれほど速くないが、重量感があるし、制球も悪くない。
しかし、相手打者も二巡目、三巡目となれば、次第に慣れてきて、変化球や甘く入った球を狙い打ちされるようになってきた。
最終回、リードしているが、相手にノーアウトのランナーを許したところで。

「動くな。」
「動くね。」

ベンチの様子を見れば、監督がピッチャー交代の指示を出しているのが分かる。
二番手の境君は、試合の中盤からずっと準備しているから、問題ないだろう。

「さあ、いよいよだな。」
「ふふふ、楽しみ。」

私たちがわくわくしながら見つめるのには訳がある。

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