平均女子だって恋をする

放課後にて


放課後、いつものようにキリが良い所まで勉強を終えると、是永くんが今更な事を言い出した。


「なぁ…そういえば毎日放課後、当たり前のように勉強見てもらってたけど、用事とか…大丈夫なのか?」


「うん。帰宅部だから大丈夫だよ。それに、バイトを始めたいんだけど、まだ決めてないから…。
そうだ!参考までに是永くんはバイトしてるの?」


すると、

「スタンドでしてるよ」

と、やっぱりな回答が返ってきた。


「ガソリンスタンドかぁー、車好きなの?」


「車よりバイクだな。むこうでも単車乗っ…いや、何でもない…」

少し慌てて口をつぐんだ。


「あぁ、乗ってたんだねっ」

バレバレなのに誤魔化してる様子が可笑しくて、深い意味はなく、何気なくクスッと笑って言った。

「ねぇ、やっぱりヤンキーだったんじゃないの?あの格好だったし」



すると、少し悲しそうでムリに笑おうとしているかのような複雑な顔をして、俯きながら


「…うん。オレ、元ヤンだな…」

そう言うと、ポツリポツリと言葉を続けていった。


「うち片親でさ、母さんがどうしようもねーオンナで…酒好きで男好きだしよぅ。
ガキだしさぁ、荒れたんだよ。 でも…母さんは母さんで苦しんでたようで…やり直そうと実家の近くのここに移ってきたんだ…」


突然のヘビーな内容にわたしは何も言えずにただ聞いていた。
是永くんは床の一点を見つめたまま話を続けている。


「オレもこのままじゃいけないって思って…普通に高校生活をおくって普通に青春して、行けるようなら専門か大学行って、母さんを助けようと思ったんだよ。
…中卒じゃ、仕事が限られちまうし、給料も安いんだろ?」


………



最近は片親の家庭が多くなった。その家庭ごとにそれぞれのやんごとなき事情があるのだろう。他人が簡単に踏み込んではいけない領域がある。
冷たいと言われるかもしれないが、話を聞くだけでいよう。ただ誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。



是永くんはようやく顔を上げ、わたしと目が合うと、ハッとした顔をすると共に耳を赤くし、慌てて言った。

「っ悪りぃ!!
なんか家庭の事情ペラペラしゃべって格好悪いなっ!引くよな!?忘れてくれ!!
つい…神崎さんといるとオレ、しゃべりすぎるな…」


少し寂しそうな顔をして、やっぱり彼は微笑むのだった。

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