☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「ヒカリちゃん、魔法のこと知らないでしょ?だからワドに教えてもらえばいいよ」
「えっ?アブラカタブラ…とかじゃないの?」
「油からなんだって?違うよ、魔法は魔法だもん」
キースは肩をすくめた。
「ワドはもっといい具合に説明してるけど」
「ヒカリ、魔法は魔力がないと使えない、これは一生のうちにおいてほとんど変化しないものだ。魔力は深夜に回復する。また魔法は半万能だ。時間に関してなければ、たいていのことができる」
「大抵の?」
「ああ、時間を操る以外はな。だがしかし、魔法もスポーツと同じで得意不得意がある。全部使えるのはほとんどいない。ところで、だ。魔法にはいくつか種類がある。種類を答えろ、シルン。順不同だ」
「うーんと、戦闘系、療治系、変質系、移動系、支配系…あ、あと創造系?」
「そうだ。創造系は絶滅危惧種、その中の“万能創造魔法”は今現在、全くと言っていいほど使える奴はいない」
「ワド以外には零でしょーが」
ぼそっとウィングがそういうと、ワドは気が付かなかったのは聞こえなかったのか聞こえないふりでもしたのか、完全に無視した。
「魔力のことだが、限界以上に使える場合がいくつかある。そのうちの一つが水晶による魔力補助。水晶は大きければ大きいほどいい。ちなみに、魔法も封じ込めることができるから、宇宙族や人間にも使える」
「宇宙族っていうのは私みたいな人。ルスタミアスに住んでないけど人間界にもいないっていう」
シルンがヒカリにささやいた。
ヒカリはそれよりも、シルンが魔法を使えないことに驚いたのだけれど。
「次に、その系統に特化した奴。それ以外の魔法はほぼほぼ使えないが、その系統だけは爆発的な威力を発揮する」
「ワドは違うの?」
「違うな、シルン。前も言わなかったか」
特化なわけないだろ、とワドが続けた。
「もう一つは、魔導士による魔力の増幅だ」
「魔導士?」
「自然界のあらゆるものから魔力を引き出せる。何から引き出すかは個人差があるようだが、常に作り続けていればほぼ無尽蔵に魔力が生まれる。周りに渡すこともできるから、一人いるだけでだいぶちがうな」
「ワドは魔導士じゃないの?」
「魔導士は夢術が使えない…言ったはずだぞウィング。使えても非常に弱い、と」
「分かってるよ、お前のその無尽蔵の魔力はどこからきてんのか不思議だっただけ」
「…生まれつきだ」
少し口ごもってそういうと、それよりも、と話を変えようとする。
「戦闘系の特徴を挙げろ、ウィング」
「はいよ。戦闘系は主に攻撃と防御に分かれる。戦闘のときにしか使わない。魔法の種類によってつかう魔力が大きく左右されるけど、強力なのはほんとに強力だから、魔力をどれだけ持ってるかによって勝敗が大きく変わるんだよな」
「療治系」
「傷とかを癒すんだよな。ただし大きく魔力を使っちまうからほんと、これぞっていうときに使わねぇと。あと弱点は、すっげームズイ事。失敗したら大参事だから、療治系特化の奴に頼った方がいいかもな」
「支配系」
「五個の中ではいっち番難易度が高いやつ。魔力消費が大きいし、特化の奴でも使いこなす奴はあんまいない。相手が単純になればなるほど楽だけど、逆に人間とかはほんと厳しい」
「え!?操り人形みたいにやるんじゃないの?」
ヒカリが驚きの声を上げる。
魔法といえばそういうのが主流だと思ってたのに…
「人形ならいいんだが、脳の命令を丸ごとつぶすことになるから。自律神経の支配下にある心臓などの臓器の支配も同時に行わなきゃいけない。たいていの奴は寝かせとくだけで精いっぱいだ。…次、移動系」
「ん、俺が特化の奴ね。あれは移動にしか使わねー奴で、主に魔法陣中心の奴が多いかなぁ…戦闘用っていうよりはどっちかというと普段使いに近い感じ。魔力の消費も少ないし、失敗も少ない。ただし、結構事故は多いかな。便利なんだけどねぇ…」
「変質系」
「そのまんま、何かの質を変えるんだよ。単純なものほど簡単かな。おもちゃを生き物にするにはほぼ無理だね、心臓とか血管とかしなくちゃいけないから。逆は簡単って聞くけど」
「創造系」
「これがムズイんだよ、最高の難易度。使える奴はほんとに一握りでさぁ。使えたらそれだけでおぉぉってもんかな。消失と創造が大体だけど、創造の中でも万能創造魔法を使える奴はここにいるワドさんしかいないのでアール!!」
「…どうもウィング」
じゃあ次だ、とワドはさらに続けようとした。
「物体が動いているのを止めるのには何系の魔法を使うか。答えてくれ、キース」
「支配系、または移動系です」
「そうだ。その違いを説明」
「…えっと…支配系は動物とか生き物で、移動系は…それ以外?」
自信なさげにキースが答えると、にこりともせずにワドが首をかしげる。
「補足は。…ああ、どうぞ」
「支配系は対象が意思をもって動いているとき、移動系は意思を持たないとき」
「正解です、じゃあ人間が崖から落ちたとき、使うのはどちらだ。また、周りにはそいつしかいないものとする。シルン」
「えっ…と…支配?」
「いや、移動系だ。落ちるという行動自体に意思は関係ない。ただし、地面と自分を引き付けるなどして落ちてる場合は支配系」
「ややこしー」
「シルンやヒカリはともかく、魔法を使うんならちゃんと覚えとけ。じゃないとまともに使えない」
「はいはい」
うーん、とウィングが背伸びをして、大きくあくびした。
「俺、疲れてきちゃった。もうやめにしねぇ?」
「ああ、そうだな、もうやめよっか」
テルがそう言うと、ワドはスクリーンを片付けた。
「じゃあ」
「後で来いよ、もうすぐ飯だから」
「…」
答えずにワドは自室とみられる部屋へ入っていった。