☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「お客様です」

「ん?」

回れ右をしてワドはキングから離れた。

「お客様です」

「お客様はお客様でも呼ばれざる客だろ」

「いいえ。ウィングの友達」

「何でわかるの」

「ウィング先輩にお話があるんだてめぇらここを開けやがれとおっしゃっています」

「…」

キングは黙ってうなずいて、すたすた歩きだしたワドについていった。


結果から言うと、外は惨状だった。

並大抵の攻撃は効かないこの船に執拗に攻撃を仕掛けている一隻の船。

ワドは愚かな人間を見下ろす神の境地に立ってドーム状に張られた防御壁に沿って爆発するのを見ていた。

キングは肩をすくめ、あいつら馬鹿なの、とワドに聞く。

「…無力なだけだ」

次元を軽く超越した視点からのコメント。

可愛げがねぇなぁとため息を吐きながらキングはワドを揺さぶった。

「声をかけてくれればこたえるのに」

「いいんだよ、あいつらどうするの?」

「…ウィングに聞いてくる」

そういって、ワドはまた踵を返した。

キングはそこでふと思い立ち、ワドを見つめた。

「そういやお前の敬語とタメ語の違いってどこなの?」

「…ご主人様が…使うなって言うけど…俺は…そういうわけには…いかないし…だから…世間体を気にしてるんなら…二人のときだけ…とか…呼び出された…とき…とか…あの…基本的には……」

おろおろこたえ始めたワドの表情は普段にも増して乏しくて、さらにそれは泣き出しそうなほどだった。

キングはよしよし手袋越しにワドの頭を撫でた。

「分かった分かった。ごめんったらな?泣かなくてもいいのに」

「泣いてない」

「ま、そーだな」

船長には敬語は禁止といわれてる手前、本人の前で本人に向かって使うわけにはいかないが、でも使っていないと不安になる、でも使いたくない。

そういう矛盾したバラバラの気持ちを一気に抱えて、今の状態に至ってるというのならそう追求すればいいというものじゃない。

「で、あいつはほんとにウィングの後輩…?なの?」

「分からない。たぶんそうだ」

そういってワドは質問とみられることをキングに向かって言った。

「俺にもいるが後輩っていうのはああいうやつが多いんだな」

「…は?」

ワドの過去の断片らしき情報に食いつこうとおい待てワド、とキングはワドを呼び止めたが、ワドは完全に無視して親愛なるご主人様を呼んだ。


「ウィングの後輩が来てるんですが乗せて良いですか」

「ん?ああ、三途の川行きの船に乗せてやれよ」

「…まじめな話を」

「あーはいはいごめんごめん。いいよいいよ。タイミングのいいやつだな。ちょうど昼飯時じゃん、手伝わせて、ワド」

「…あ、はい。今日はソバにしようと思ってたところなんですけど」

「え、マジ!?俺打ちたい打ちたい!!作りたい!!」

「面倒ですからお」

「なんか言った?」

「…」

無言の圧力に気圧されてワドは無理やり首を横に振った。


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