☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「はじまっして、僕は」

「初めまして。帰っていいよさようなら」

「シルン、嫌悪感をむき出しにすることはないと思うけど…」

キースがなだめてシルンが膨れる。

ウィングは目の前の“弟”に向き直った。

「お前もお前やねんて。何でここにいんねん。見つけたのが船長やったら一瞬でジ・エンドやったからな?」

“弟”はすぅぅっと深緑の目を細めた。

なるほど、似ていない。

テルはちらりとウィングを見た。

…うまく隠してるけど、迷惑そうだ。

「先輩が捕まってるって聞いて」

「いつの話や。しょっちゅう捕まりすぎとってわけわからんようになる」

「…そいつに」

“弟”は静かにテル…ではなくワドを指さした。

「は?ワド!?」

テルが目をぱちくりする。

いやいや、こいつそんなに危ないやつじゃないだろ。

「魔界で今起きてる内乱に巻き込まれたっていって…!!!」

「内乱?」

「何を勘違いしてるか知らないが、魔界は至極平和だ。平均的に見て」

「でも」

「天使が見たら常に内乱状態だろうが、あれが普通で平常運転だ。案ずるな」

ワドがいつにも増して冷たくぴしゃりと言い放ち、くるりと背を向けた。

「天使にはわからない。悪魔は神と戦っている」

数歩進んだところではたと立ち止まり、ワドはこちらに振り返った。

「船長、ソバを打つがどうする」

考えるまでもない。

テルはにっこり笑って軽く地面をけった。

「俺もやる!!」

不意を突かれて、ワドは真正面からテルに抱き着かれてしまった。

「〇¥△#%&…」

「ん?どしたの?」

それは無視して、聞き取れないことをぶつくさ言ったあと、踵を返してワドはキッチンの方へ駆け足した。


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