☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「うっまぁぁぁぁい!!!」
「だろ~?」
「…食べ終わったらそこにそば湯がある」
お椀にざるを引っ掛けたようなボウルに入ったソバをフォークで巻き取ってはつゆにつけていたテルが嬉しそうに笑った。
「八割だけど、俺はこれが一番好き。つか、ワドの手料理なら何でも」
「…お代わりですか」
「うん」
パスタをより分けるような道具でもう一度テルにソバを渡すと、ワドは興味深そうにヒカリを見た。
「…棒二本で食べられるものなんだな」
「あ、まぁ、はい…」
驚いたことにハシの文化を知らなかったワドはヒカリの持っているハシに異様な興味を示していた。
「なるほど…はさんで使うんだな…滑りそうなものだが…器用なものだ」
「あの…食べにくいんですけど…」
じっと見つめられたヒカリは言いにくそうにそういうと、うつむいた。
何しろ恐ろしいまでの美貌なのだから。
「すまなかった。気にしないでくれ…しかし…食べやすいのか」
「あ…はい…」
興味を持ったワドはヒカリが水を手に取った瞬間にハシを持ち上げてじっと見つめる。
「…棒だな」
食器持参の給食のおかげでカバンに入っていたのだが、それにワドは興味津々で、ヒカリはさながら新しいおもちゃを手に入れた子供のようだと思った。
ヒカリにとってはフォークでそばを食べるということ自体がわからないのだけれど。
「今世紀最大の驚きだな、ワドに知らないことがあるなんて」
「きっとその100年間は何の事件もない平和な一世紀だったんだろうな」
「非常に驚きに満ちた百年だったよ。一昨日ノストラダムスの大予言が的中して宇宙が破滅したからねぃ」
「…」
ゆっくり二度瞬きしてからワドは静かに言った。
「テル…宇宙の破滅はつまり全物質の破滅を意味するんだからな」
テルとワドを除く、その場にいた全員が噴き出した。
ワドは静かにそれを見ている。
「何か面白いことでもあったのか」
生真面目だ。
「うん、そこ黙れ?あとナルシストと存在希薄野郎と以下略、後で覚えとけてめぇら」
「…」
怒り心頭のテルをじっと見つめてワドはやっぱり静かに言った。
「なぜ怒っている」
「俺のワドを笑ったから」
「…」
「俺のワドを笑ったから」
「なぜ二回言った!?」
ヒカリはググググッとのけ反った。
映画で気持ち悪い人とかいうのは違うの。
こいつはマジだ!(!?)
「俺の大切なワドにかすり傷でもつけたら許さない!!」
「…タイセツ」
また違った意味で危ないワドは大切の新しい意味を見つけようとしているようだった。
「大雪(タイセツ)…」
「何で天気予報なんだよ。というか、お前いつから天然キャラに鞍替えしたんだ?」
「…ご主人様の趣味が」
「ありがとう!?やめて良いよ!!すっごくやめて!?」
「…」
ワドは頷いてやっぱり静かに言った。
「はい」