☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「…ずいぶん冷たい…ですね」
「敬語なしな。まあ、いいだろ。あんくらい言っとかないと」
鍵開けて、とテルがワドに言うと、従順にワドは扉を開いた。
「フィールドはどうしますか」
「んーと…うん、たまには決めてよ、俺の訓練したいんだし」
「でも」
「いーの。いつでも望む場所で戦えるわけじゃないでしょーが」
「…はい」
「けーご抜けてねーよ。次使ったら怒るから」
「…」
黙ってうなずいて、ワドは少し迷って街中を選択した。
広い部屋に、たちまち町が出来上がる。
「地図は」
「お前だけ見て。俺はいっつもそういうの把握してないし」
「…分かった」
すこし不服だったんだろうか、ワドはパチンと指を鳴らして呼び出した地図を一瞥して軽く振って燃やした。
「もう覚えた?」
「ああ、このくらい」
ワドはそれだけ言って武器は、と問いかける。
「槍とか行ける?銃とか弓でもいいけど。間合いの練習したいんだよな、俺は短剣で」
「短剣…いつもあの剣を持ち歩いているだろう。なぜ短剣でやる。テルがナイフ持ってるところなんて見たことないぞ」
「まあね、あの剣“強すぎる”んだよ。街中で戦うと一太刀で家に亀裂が入るから」
「亀裂どころか粉々だろう」
「あはは、だからといっちゃあなんだけどさ。無駄な破壊をしたくないんだよ、俺」
「じゃあ、建造物の方にもヒットマーカーつけておく」
「あれ、新機能登場?」
「…別に」
設定を変更するとワドは手近な建物を軽く殴る。
ドアが吹っ飛び、それは真っ黄色に染まった。
「テルがやったら緑になる」
「ん、ありがと」
「ハンデは」
「そっちは夢術と魔法許可。こっちは水晶ちょっとほしいかな」
「夢術と魔法許可…ほとんどこっちは全開だ」
「構わない、お前に負けてちゃな」
互角くらいだし、とケラケラテルが笑った。
「…お前も…本気を出せば俺なんか一瞬でひねりつぶせるだろ」
「一瞬は言いすぎだろ。さすがにお前相手だと厳しい」
「そんなこと…」
「お前が全開になったら…つか、全部開放したら…宇宙一だって夢じゃねーよ?」
「無い」
ワドはきっぱりと言い放った。
「この十字架で縛り上げてるのは知っているだろう…」
「そうだけど。外したらさ」
「あんな醜い姿に誰が好き好んでなるものか」
「…はは、ばっかじゃねーの」
それより綺麗になるんなら、醜くなんてなるもんか。
「じゃ、はじめよっか」
「ああ」
ぱあん、と乾いた銃声の合図で二人は動いた。