☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「おっまえなあ、無言魔法はズルいだろ」
「…文句があるなら俺のことを縛り上げて痛めつければいいのに」
「なんでだよ。ま、今回は俺の負けかな。あーあ、無言魔法使われるとは思ってなかった」
無言魔法とは、本来特化の魔法にしか使えない、詠唱ゼロの魔法だ。
それによって威力も格段に落ちるため、使えても使わないのが現状だが。
「だいたい、詠唱なんて合図みたいなものだろう…人によって違うくらいなんだから…」
「ほらほら、天才の考え方だ。無言魔法なんてウィングでもすっげー練習して何とか蜃気楼(ミラージュ)だけできるようになったんだからさ。それも短距離」
「…ウィングは天使だろ」
「おっとー、差別ともとられかねねーよ?悪魔ちゃんのワドにしかできないわけじゃないだろ?現にゼロだって使えねーし」
「ゼロさんは」
「私は機械ですからね、生前の体はほとんど切り落とされていますから」
「生前?」
テルは引っかかったところがあったようだったが、ワドがこてんと小首を傾げ、見てたのか、とつぶやいた。
「うん、参考になったよ。にしてもすごいね、あの無言魔法!!無言で強力なんだもん」
「…そう」
無表情にそういってでも、とワドがウィングに言った。
「ウィングは使えるんじゃないのか」
「使えるで…せやけどなぁ。めちゃ威力落ちんねん。ワドはんは天才なんさかい、わてとは格が違うねん」
「…」
ひとこと言いたそうな沈黙だったがしかし何も言わず、ワドはやっぱり首をかしげた。
「かっこよかったよ、ワド!!」
「…あぁ…」
シルンの黄色い声にも大して反応を示さず、テルに二回戦は、と問いかけた。
「いーよ。今回は俺の負け。っていうかさ、ワドって槍の使い方がものすごくバトンに似てるな」
「…気に入らないならもう一度やって俺を縛り上げたらどうだ。抵抗しないから」
「だから何でだよ、馬鹿」
「…蜃気楼」
答えずにワドは槍を投げて消し、蜃気楼(ミラージュ)で姿を消した。