☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

僕がいたときには、もうウィングはその家にいた。

付近の村の中でも一番の孤児院だったんだ、その家は。

はっきりいって、異彩だった。

ウィングは一人じゃなかったけど、なんだか…孤独とは言わなくても、孤高っていうか、そんな感じだった。

いつも人の輪の中心にいて、僕からしてみれば…そうだな、高嶺の花って感じ。

ウィングは崇拝されてたんだよ、それこそ神様みたいにね。

…それが狙いだったっていったらそうなんだろうけど…あとから聞いたら、弟がいたんだよね。

元々面倒見が良かったのもあるかもしれない。

それはともかく…もう、ウィング王国って感じかな。

クリアス=ウィング王国。

ウィングからしてみれば、僕らは統率すべき国民でしかなかったんだよね、きっと。

だからあの火事のときも、ウィングを誰よりもみんな優先した。

異質なんだよ、それって。

差別がないはずの天界で、ウィングは人為的な差別を、しかも自分にとって都合のいい差別をつくってしまえた。

その火事でみんな死んで。

っていっても、遊びに出てた子もいたんだけどね。

僕は、僕だけは不思議と生きていられた。

ウィングと僕と。

全く付き合いなんてなかったんだけど、何だかんだで僕の夢を応援してくれた。

僕が今医者を名乗れるのはね、ウィングのお陰なんだ。

夢を叶えられたのは、ウィングのお陰…なんだ。

え?

言ってなかった?

僕の家族はね、伝染病で死んだんだ。

姉がいたんだけど、一家もろとも。

僕はギリギリ片足ですんだんだけどね。

死に顔も見られなくて、すっごく伝染しちゃうから。

悔しくて悔しくて。

いつか魔界にいって、医術を勉強したかったんだ。

ウィングに?

あはは、言ってなかったよ。

実はね、火事になったのって、僕らの家が、やっぱり病にかかったからなんだ。

そこまでうつりはしないって、今ならわかるんだけど。

一人、命を落としちゃって。

家ごと僕らを焼き払うっていうつもりだったみたいだね。

僕らは別に辛くないんだよ?

そういう人種だし。

そういう意味でもウィングはすごいよね。

より大きな善のため、命を捨てる天使の良心を裏切らせたんだから。

だから、生き残った僕らは追われちゃったんだ。

天界にはいられない、かといって神界には行けない。

魔界に行くしかなかったんだ。

そこで僕の夢をあかした。

協力してくれたよ、快く。

でも魔界で嫌なものもいっぱい見て、それで…この銀河にきた。

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