☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
カチャカチャ、と食器が触れあい、それらをワドは一つ一つ磨いていく。
きゅっ、きゅっ、と小気味良い音がメインルームに断続的になり響いていた。
「よぉ、ワド」
不意にかかった声にワドは顔をあげる。
「なんだ」
繊細な装飾が施されたガラスの食器を絹で包みながらワドが言った。
「あーっと…魔法でせぇへんのんか?」
「こういうのは俺の専門なんだ」
「専門?」
「家業が宝石商だ」
「あぁ…」
また一つガラスの皿を手に取りながらワドが頷く。
「魔法は便利だが、今は時間があるからな」
ワドはにこりともせず皿を見つめて目を細め、手に持った皿を人差し指で撫でた。
「どした?」
「傷があった。仕方がない、また新しいのを作る」
「え?っておいおいおいおいおい!これお前が作ってたのかよ!しかも傷とかどこだよ!」
「俺がつくったら駄目なのか」
「違う違うそうじゃねーよ!器用にも程があるだろ!」
「誰が作ってると思ってたんだ」
「へ?いや…」
しばらく考えて、ウィングはそうだそうだと手を打つ。
「なんかの芸術品のコピーかと思ってたんだよ」
「…売ってもいいが。商品用もあるからそっちの方でいいか」
「まてよおい!」
これ売ってるの!?
とウィングが噛みつく。
「…あぁ…星についたらたまに…」
ハンドメイドでも結構言い値で売れる、とワドは言った。
「つかお前のハンドメイドレベル高すぎなんだよ…定価は?」
「一枚100ドルで十枚セットで850ドル。大皿小皿、マグカップからナイフまで食器一式で揃えて5000ドルだ」
「安っ!?」
ゼロが二つ足りねーだろとウィングが言った。
「…材料費いらないんだ。火山地帯の溶岩とかゴミ箱からガラスを抜き取ってるから」
丸儲けだろう、とワドが言う。
「しかし不思議なことに美術館系によく売れる」
お土産に売るような物か、とワドがウィングに言ったが、ウィングは深くため息をついて言いかえした。
「展示するんだろ」
一人の入場料だけで足りそうだけどな。
「何のコーナーに置くんだ」
こんな手作り感溢れた日常品を、とワドが言った。
「…ところでどこで売ってるんだ?」
「色々だ。交易港とか、フリーマーケットとか屋台販売とか」
「…」
すごい騒ぎになりそうだ、とウィングが呆れて乾いた笑いを溢した。