☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
テルはムカついていた。
ものすごくムカついていた。
「…殺してやる…クリアス=ウィング!」
「え?は?ちょ、ちょっと船長さーん!?」
「何でウィング殺すの!?」
キースとシルンが全力で止めたが、それをふりきり、テルは叫んだ。
「覚悟しろぉぉぉぉぉ!!」
「は?ちょ、何なんだよ!?」
気がついたウィングが慌てて逃げようとするが間に合わない。
「半球部屋防御(ドームルームガード)」
呟いてワドはテルを見据えた。
「何してるんだ」
「ウィング!お前の罪は万死に値する!」
「何したんだよ俺!?」
テルは防壁を殴るのを止め、ウィングを睨んだ。
「…ワドと仲良くしやがって…」
「おい!?」
嫉妬…だろうか。
ヒカリはさぁっと青ざめた。
気持ち悪い。
テルの目がイカれてる。
「俺の主人はお前だけだ、テル…」
「言わせといてなんだけどさ、全くと言っていいほど嬉しくない!」
かっこいいのに、いいのに、と駄々をこねるテルにパチンと指をならして防壁を解除するワド。
「俺が隷従するのはお前だけだ、テル…」
「だから全然嬉しくない!」
「俺はお前だけの奴隷だ、テル…」
「だぁかぁらぁ、嬉しくねーよ言い方変えただけだろーが!」
「じゃあどうしろと」
「お前はいいの、なんもしなくて!」
座ってるのを眺めてるだけで幸せ。
ヒカリは一気に1kmほど心の距離を置いた。
「…あ、そう言えばウィング、ちぃにぃは?」
「…?あ、ああ、あいつ?帰った」
「帰った!?」
「理想の俺はいないって帰らせた」
「ウィン…」
「いーの。もう、無駄に人の顔色窺わなくていいって言うんだし。あいつの神様は他にいるだろ」
きっとさ、とウィングは肩をすくめる。
キースは潤んだ瞳で何度も頷いた。
「ウィング…ついに改心したんだね…!」
「…改心…?」
ウィングは若干その表現に疑問を感じたようだったが、キースが飛んで跳ねて喜ぶのでほかっておいた。