☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
幸せな理想国家
星に着くぞ、と。
それを聞いたのはさらに数日たったある日。
気がつけば、ヒカリが目覚めた日から1週間が経過していた。
「ヒカリ、暮らすかもしれない星だからな、俺の偵察のあとにシルンやキースと降りるといい」
その星は、あちこちに珊瑚の島が点在する真水の海がほとんどを占めていた。
暖かく、安定した気候はなんとなくグアムやハワイ諸島を彷彿とさせる。
ワドの偵察のが終わると、中心から少し外れた、比較的大きな島に船は降り立った。
「綺麗なとこね」
シルンの言葉にヒカリは頷いた。
真っ青な海はどこまでも澄み、美しい。
浅瀬にも、小さな魚がチラチラと泳いでいた。
「そつがねーよなぁ、ほんと」
珍しくテルは飛び出さず、砂浜でのんびりしていた。
「ワドのやつ、何時間も調べまくってたんだぜ?」
桃源郷とも呼ばれるこの星は、柔らかな光を放つ恒星を衛星に持っていて、さらに1万年に一周のペースでグルリと公転している。
そのスピードはなぜかすざましく早い上、無駄に不規則に加速減速を繰り返すので計算しないとなかなか星に着けない。
そのためワドは必死で過去の100年分くらいの資料を漁り(といってもすでに覚えていたのだが)、なんとかその規則性を叩き出して星についたのだ。
その苦労をおくびにもださずすました顔でヒカリにいいとこだと思うが、と助言するワドは確かにそつがない。
ちなみにその功績はゼロに押し付けられてしまい、ゼロは今魔界で必死に誤解を解いている。
「ここにすみなよ、ヒカリ」
シルンはそういって水着買いにいこ、とヒカリを引っ張る。
そういえば、服は何故か倉庫に山のように入っていた物をいくつかワドが持ってきてヒカリにくれた。
制服じゃ動きにくいだろう、という心遣いだ。
「んで泳ごうよ、ここあんまり波ないってさっき聞いたの」
うん、とヒカリが頷くが早いか、シルンはヒカリと共に船を飛び降りた。