☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「あれ…ねぇあれってワドかな?」
「んー?」
「あの人だよ、フード被ってる人」
「まあ、歩き方はあいつっぽいよなぁ」
「あんな歩き方する人ワド以外に知らないよ。絶対ワドだって」
素晴らしい体重移動で常に体幹をまっすぐ保ちつつ、スーツケースを引きずっている。
何故あんな民族衣装なのかは謎だが、キースとウィングは話しかけてみた。
「ワド~!おーい!」
「…」
ワドは無言のままクルッとこちらを向いてスタスタ歩いてくる。
「何か用か」
「うーんと、何してるの?」
「見ての通りだ」
見ての通りとはいっても、見た感じただ南国の民族衣装で町をほっつき歩いているようにしか見えない。
「…あー、コスプレ?」
「こんなアニメキャラ一体どこにいる」
「観光、でもないの?」
「そんなのんきに遊ぶか」
いやそこは遊んでいいと思うとキースは苦言を呟きかけた。
「商売だ。ウィング、お前がこの前言っていたあの食器シリーズを売ろうとしている」
「あ、あれか?」
「ああ」
本気で売ってたのか、とウィングはため息をついた。
「で、その格好は…?」
「ああこれか。通りの露店の女の子が買ってくれと言うから。それに着ていた方が売れ行きがいい」
「…その女の子ってどんなやつだ?」
「七つか八つくらいの水色の髪をした子だ。将来はきっと美少女になるだろうな、かわいい子だった」
「…お前ってなんか…趣味が変わってるよな」
「そうか、どの辺が」
「いや…子供好きとか…」
「姪っ子がいたんだ、その子に似ていた」
「お前って血縁者いたんだな!」
ウィングが若干叫んだ。
「…他人も同じだ。…血縁者として最後に会ったのは彼女が3つのときだったから」
向こうは顔も覚えてないだろう、とワドは言って少し憂いげに瞳を伏せた。
「…もう縁切られててもおかしくないしな」
ボソッとそういってワドはギュッと胸の辺りを握りしめた。
「彼女も可愛かった。今頃どこかで彼氏と遊んでるだろ」
「…」
言い方にとげがあるのはどうしてだろう。
キースとウィングは首をかしげた。