☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「ごめんな、さい、ごめんな、さい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「…」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃっ…」

「禁句の意味分かってるの、ワド君」

「お願い、します、言わないで、お願いします…お願いします、なんでもする、するからお願い…」

「…言っても実行にはうつさねぇよ」

「嫌、嫌、いや、いや、イヤ、イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤダぁ…」

「…そんなつもり、無かったんだけど」

やばい、とキングは足元にすがりつくワドを見下ろした。


ただの冗談だったのに。


「…脆すぎんだよ…!」

ただの悪意のない冗談で、いとも簡単に壊れてしまった。

脆い。

「何が、地雷だった…!?」

途中まではそう、別におかしくなかった。

「やめてやめてやめてやめてやめてヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヨねぇ…」


こんな風じゃなかった。

いつも通り、普通の無表情で。


キングは唇を噛んだ。


思い出せ。

俺の、どれに怯えた?



「ったくー、お前なぁ。覚悟しろよ」

ふぁさ、とワドを柔らかな芝生に置いて、キングは息を吐いて笑う。

「何を」

「なんでそんなに自分に求めんの?ないものをさ」


自分に理想を求め、従順であろうとする。

それは何故なのか、考えるべきだった?

俺は、どうすれば良かった?


「…」

「いい加減に、ご主人様呼び最近増えてるしさ。ごめんなさいとかの謝り癖治ってねーし」

「…」

「俺言ったっけ、別の罰」

「…言った」


普通だ。

ここまではそう。

じゃあ、ここか?


「じゃあ、ここに残って、頭冷やせよ」

「…ぇ」

「船長に頼むよ。俺らは適当に一ヶ月位どっか行くからさ、お前ここに残って南国生活エンジョイしてリラックスしてな?」

「…」

「んでさ。もし治ってなかったら本気で降りてもらおっか?」

船長もお前の矯正には協力的だしね、と付け加える。


別に悪気があった訳じゃない。

ご主人様本人の隣じゃ矯正しずらいし。

ここののんびりした感じでうまい具合に癒されてくれたらいいな、と思っただけで。

本気だった訳ですらない。

特に後半とか、完全に冗談だった。

だって船長が許さない。

絶対に。

なのに。


「…いや、です」

「んじゃあちゃんと…」

「ごめんなさい」

「だから言うなって俺が…!」

「ごめんな、さい、ごめんな、さい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」



「うっせーな、この餓鬼」


いっそ悪者になれば、良いのだろうか?


「黙れ」

静かにキングはワドの首を掴んだ。


俺は先が長くないって知ってるだろ?

なら、嫌われといた方が、かえっていいのかも知れない。

こいつには、別れだけでも衝撃が強すぎて、壊れてしまう。


「…声帯電死(聖大天使)」

「あ、あがぁぁぁぁ!!」

ワドはグッとのけぞり、声になれない叫びを響かせる。


…一生のものじゃない。

精々、一日ちょっとで治る。

でもその痛みは一生残るんだ、ワド。

それを受けた記憶は、決して消えない。


「う、うぅ…」

ついでに眠らせバタッと、崩れたワドを抱えて呼吸を確認するキング。

本当に眠っていただけで、キングはふぅ、と息をついた。

「…寝てたら可愛いよなぁ、確かに」

腕で頭を支えてやると、驚いたことに自分から身を寄せてくる。

「…ダイァ」

「…誰だそれ」

俺が生きてる間に教えてくれるのかな、とキングな珍しく感傷に浸る。

「だっこ」

ちっちゃい時の夢かな、とキングは少しだけ微笑んだ。

抱っことか。

可愛すぎる。

この氷点下凍結野郎が、とキングは一人呟いた。


寝てたら素直なのに。

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