☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「ん…?うさぎ?」
とりあえず抱き上げて見たものの、いったいどうすればいいのやらが本心のキングは肩を竦めて頭を撫でる。
「そういや、ワドがもってたっけな…」
目つきの悪い不眠症の男(シルンより)に貰ったといううさぎ。
魔界のぬいぐるみだから一日たったら動くようになるらしい。
一応、食事も取るみたいだし。
だけど、どうなのか。
確かにワドの趣味は知っていた。
いいとは思う。
だけどあの異常なまでの猫可愛がりよう。
気がつけばワドの側にはあのうさぎ。
「のめり込んだって感じか…?」
あそこまで、可愛がる…?
「そういやおまえ、ワドは?」
「ぴゃー」
「…いや、わからん」
説明しようとしている意図はわかるのだが、なにぶん人間の言葉すら話さないので意思の疎通ができない。
キングはったくもう、と悪態をついてふわりを下ろした。
すると、ものすごい勢いでかけていく。
呆気に取られていたが、慌ててキングはそれを追いかけた。
「L…」
ペンダントを頭上に翳していると、不意に現れたワド。
ゼロは一瞬瞳を見開いたが、次の瞬間目を細めた。
「ブライドさん、俺」
「L君、駄目です…ゼロと呼んでください…」
「君付けなんてやめて下さい、ずっとパートナーだったのに」
「君はいい子ですね…Nが言っていましたが…」
「あの人が。まさか」
「クエスチョンマークをつけるときは語尾を上げましょうね…」
「だいたい、どういう関係だったんですか」
「元パートナーですよ…それだけです…L君は本当に心の優しい良い子なんですね…」
「俺は邪険に扱われても気にしない。遠慮をするな」
「あのですね…その自己犠牲精神どうにかしてください…」
怒られるのは私なんですと垂直に手を伸ばし、ワドの頭に手をおくゼロ。
「昔の君を…凍らせたような人ですね…」
良い変化ではない。
でも、今は良い方向へ来ていることは確かだ。
やっぱりNの受け売りだ。
ワドと同じく黒革の手袋をしているせいか、ワドは触れられるのを拒否しない。
ゼロは僅かにしたにあるワドと目線を合わせ、静かに息をついた。
「昔の君は、もっと笑ってました…」
「ゼロさん、俺は二度と同じ罪は犯さない。俺はDOLLだから」
目を逸らして走り去るワドを辛そうな微笑みで見送ったゼロは、新たな来客に向き合った。