☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
ワドを担ぎ込み仮眠中のキースをたたき起こして治療を任せるとテルはメインルームに戻り爆睡した。
さてさて起きたのはなんと午後1時。
その間ずっとうつぶせになって倒れるように眠ったテルは少し背中に違和感を感じていた。
「…踏んだ?」
「ううん」
シルンはニッコリと笑った。
「あれ、そういやウィングってもう起きたか?」
「ううん」
シルンはニッコリと笑った。
「いい加減起きやがれこのねぼすけ!!」
「…」
「もう午後だぞこのやろー!」
バンバンバンとウィングの部屋を殴ったり蹴ったりしていたテルはなかなかででこないのでイラッとして叫んだ。
「ご主人さ…違…あっと、何して…」
途中まで言ってキングにトントンと肩を叩かれて慌てていい直したワド。
さっきの攻撃が相当効いたらしい。
「ウィング寝てんの!」
「俺が起こすからあの…うん」
チラッと後ろを見て曖昧に言ったワド。
先ほどの攻撃がとても効いたらしい。
「ん。ヨロ」
「起きろ…起きろウィング…」
ワドはテルから場所を譲られるとそっと扉に手を当てて、地獄の使者のように囁いた。
何かとても恐ろしげな不穏過ぎる空気。
ぞくっとしてテルは慌ててワドの顔を覗き込む。
いつもと変わらない…いや、無表情度が少しアップしたような顔でシュウシュウ息を漏らすワド。
「ウィン」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「起きたか」
「どんな起こし方してんねんっ怨霊にでも取りつかれた思うたわ!!」
「心当たりがあるのか」
「そりゃあ主に振った彼女とか…って何言わせとんやて!」
「勝手に言ったんだろう。それにその方言無理やり付け足して若干間違ってるしゃべり方やめろ。耳につく。気持ちが悪い。不快だ」
「ひどっ!?」
「…」
「今日はよくしゃべるなぁワドっ」
「…そうか」
「…Lさん、だから疑問形の後にはちゃんと疑問符を入れましょうね…」
きゃぁぁぁぁ、とそばにいたシルンが悲鳴を上げる。
「今日は何肉だ?」
「鶏肉です…テルさんもいりますか…」
「鳥なら一口!」
「どうぞ…」
「鳥か鹿かの問題じゃない!その食べ方!!!」
「これも文化ですよ…」
「認めないから!!!!」
半泣きで目をそらしながらしゃがみ込むシルン。
ワドは大丈夫かと手袋越しに頭を撫でる。
「ぐすん…」
「少し刺激が強かったな」
よしよしとやりながらハンカチを渡す。
「ありがと…」
「なんや、シルン踊り食いしたことないんか?」
「やめてよだからわざわざ言わないのに!!!!」
「新鮮が一番です…生鮮食品は…」
「生き物生きたまま食べるなんて言語道断!!」
「そうか?」
「だって、だってまだ心臓動いてるんだよ!?痛みとか感じてるんだよ!?」
「蛇なんてひよこ丸のみじゃねえか」
「それはいいの!!人間はだめなの!!」
「それって蛇か?」
「やめてよさいてー!!」
わんわん泣き出すシルンに優しく手を差し伸べるのはワドただ一人だ。
「…魔界の文化を否定しないでくださ」
「うるさい!!」
ぼそぼそ反論しようとしたゼロをぴしゃりと怒鳴りつけてシルンは駆け出した。
「彼女…Lさんに恋でもしているんですか…?」
「その答えはいぇすだ」
「ひらがなやめてください…耳につきます…気持ちが悪いです…そして不快です…」
「お前ワドに似てんな」
見た目は置いといてさ、そう言ってテルは肩をすくめた。