☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「…なあ、シルンちゃん?」
「黙って腹黒カウンセラー」
「なんで日に日にワドに似ていくのかは知らないけどさ、もういい加減なくのやめよ」
ぐっしょりと濡れた部屋の湿度計は90%以上を指していた。
涙の量はテルだ。
まるで漫画みたいな光景にキングは心からのため息をついた。
ワドが星に近づいたから望遠室に行くといってからもう何分経っただろう。
いや、何時間もたったかもしれない。
いい加減に脱水症状が出るんじゃないかと思っているこのころ、ついに放送が入った。
「星に到着しました。直ちに船内に入ってください。繰り返します。目的地に到着。甲板にいるものは船内に甲板になんて誰もいないやないかいな!黙れそこでおとなしくしていろ。船内にいるものは絶対に外に出ないでください。繰り返します。せ繰り返さんでもいいやないか。少しでいいから黙っていろ。はいはーい。おい待てそれを触るな酸素が抜けるだろうが。こんなようわからん文字じゃよめへんわ。じゃあここから出ていけウィング。船が墜落したらお前の責任だからな。えー、そらないですわー。黙れ。おい、それもだめだなぜ切り離しのスイッチを入れてえ、そうなん?おい、ここ人がいるだろうがっ!キングか!?シルン連れて逃げろそこ十分後に真空に放り出される!!!何てことしてくれたんだウィング早く出てけ!そう固いこというなや。おいそれ以上ここの機器を勝手に触るな!!!」
怒涛のように流れていく放送を聞きながらキングはすぐに立ち上がった。
シルンもさすが幹部、すぐに立ち上がる。
「大切なものとかないの?」
「大丈夫だこれで丸ごと持ってく」
ぐっとシルンを抱き寄せキングは箱の中に保管されていたカラーボールのようなものを握りつぶした。
途端に家具も何もかもが修復されたボールの中に閉じ込められる。
「カプセル持ってたの!?」
「あったりまえ!」
珍しく慌てていたワドの声はキングの耳にしっかりと残っている。
あれだけ一生懸命叫んでくれたんだ、ちゃんと逃げるよ…
「行くぜシルン!」
ガラスの筒の中に飛び込んだキングは、絶望に顔をゆがませた。
ああ、そういや、星が近いんだっけ…
「キング!!!!!シルン!!!!!」
直接はメインルームにつながっていないここは、ハッチを開け甲板を走らなければならない。
星に近いせいで酸素はまともに残っていなかった。
走ろうとしたキングはそのまま突っ伏し、意識を失った。