☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「これ、全部いるの…?」

「加工しなければいけないんだ。一つの水晶を輪切りにしていくから」

「理由になってない」

「まだ最後まで言っていないだろう。船の魔力もこれで補っている。中心には確かにこの星の中心のものと同じものがあるが」

「え!?どのくらい持つの?」

「大体足さなくても十年は持つ。安心しろ」

「…」

結局最初の疑問の理由にはなっていない。

シルンは軽く頬を膨らませる。

「何で全部いるの?」

「俺たちの携帯用と、商品だ」

「商品?」

「言っただろう、旅の中では珍しいものが手に入る。これは高く売れるんだと」

「ああ、そういえば」

それなら多いほうがいいけど、どうなんだろう。

積みあがった水晶の山はかなりの大きさになってしまっている。

これ、船に運ぶのだけでも一苦労…

「おいシルン気を付けろ」

「え…!?」

移動術の魔法陣が現れたかと思うと空からドバドバとやっぱり水晶が落ちてくる。

カシャン、と重なり合う音はどこか神秘的だ。

慌ててよけたシルンは呆然とそれを見ていた。

「ちょ…何この量!!!」

「あ、調子はどうなん?シルンはん。まぁ几帳面に種類ごとにまとめてはりますなぁ」

「…おい、切り口が雑すぎだ」

「いいやないですか」

「…期待はしていなかった。安心しろ」

「すっごい馬鹿にされてるよ、ウィング」

ワドが冷たく拾い上げては断面を撫で上げる。

「なぜ節で切らない。生育度も落ちる」

「生育度は置いときましょうやワドはん」

「黙れ、耳障りだ」

一刀両断されてうっとウィングが呻く。

そこへダイアモンドカッターを回転させたままテルが現れた。

「よう!」

「スイッチを切れ」

「はいよ。切り方がわからない」

「貸せ」

ぱちんとスイッチを切って特大の水晶を受け取ったワドはそれを眺めて満足げに笑った…

「!!!」

笑った!?

「落ち着くんだ、この魔力」

まるで自分の子供でもかわいがるかのように優しく微笑みかけるワド。

「綺麗だろう…」

シルン以下三人は凍り付き、初めてかもしれないワドの微笑みを見ていた。

「ワドすきだよなぁその水晶」

「当たり前だ。呼応している」

「そっか」

今までの水晶とはだいぶ色が違う。

揺らめくように色の変わる水晶はワドとの出会いを喜ぶかのようだ。

「何…それ…」

「創造系魔法の水晶。ワドは創造系の使い手なんだ」

「まっじか!!」

「あの絶滅危惧種の!?」

「でも、この星にはないって…」

「あったの。それが」

「フフフ…最初に調理してやらないとな…」

「…」

なんだかテンションが崩れてきてるような気がしないでもない。

ワドは水晶を最後にギュッと抱きしめて名残惜しそうに水晶の山の上に大事に置いた。

「じゃあ、送る」

「あ、俺やるで!」

「…じゃあ、そっちの山だ」

「はいよ!」

「移動術系魔法…転送…」

「移動魔法陣!!」

パチン、と指を鳴らすとワドのそばの水晶の山は消え失せる。

トン、と足を踏み鳴らすとウィングの足元に魔法陣が現れて水晶を飲み込んでいった。

「魔法って便利ね…」

「得意不得意あるんだよ。僕は結構戦闘系とか得意なんだけどね」

「ふぅん、意外」

「良く言われる」

「さっさと戻るぞ。この星にはもう用はな…」

「見つけたぞ流星!!来い、こっちだ!!」

「…」

「また?」

ワドを遮って響く声。

冷たい視線でそちらを射抜くワドに肩をすくめるシルン。

「どちらはん?」

「しつこく狙ってくるの。暴き屋の部下よ」

「そうなんだ」

一般に名前どころか顔も知られていないその男は、銀河中に広く支部を持つ情報屋のトップだ。

「下がっていろ、テル。魔力のあるこの場所で良い度胸だ」

「相手も…悪魔かもしれないけど…」

「容赦はしない。お前に刃を向けた者は俺の敵だ」

「ありがと、ワド」

冷たく敵を見つめるワドは頼りになると同時に、どこか危うい。

そんなワドを、テルは静かに見つめていた。


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