☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「すごい…何、あの魔法…」
「あ、あれ?全消滅(フルロスト)魔法」
「全、消滅?」
「対象物を完全に消すの。あれ取得できないやつは創造系の魔法とか使えないっしょ?」
「うんそうだよね…でも」
「ああ、超ムズーーイ!!」
「…うん。それは分かってるよ」
キラキラした笑顔でキースをぶん殴るテル。
それをよけつつキースは笑った。
「何で使えるの?」
「ワドだから」
「…そうなんだ」
「あのね、あいつ天才なの。秀才なの。馬鹿なの」
「かなり矛盾してる気がするよ」
「気にすんな!」
にかっと笑ったテルを苦笑いしながらキースは見つめていた。
「へぇぇぇぇ、悪魔みたいや」
「…光栄だ」
目を細めて言うワドにクスリ、とウィングが笑う。
「ほんとすごいんやなぁ…」
ついさっきまでそこにいた男の面影を探してウィングが目を凝らす。
ワドは興味なさげにそちらを一瞥した。
「…警告しておくが」
「なんや?」
「パーティーゴールド…テルを裏切るな。特に人質なんて取ったら問答無用で首が飛ぶ」
「…変に勘繰らんどいてほしいってのが人情ってもんや」
「止めはしない。だが俺はともかくあいつらを傷つけるなら容赦はしない」
「あんさんならええのん?」
「当たり前だ。俺のことなど正直言ってどうでもいい。だがパーティーゴールドがうるさいだろうな」
敵意とも好意とも受け取れない視線をウィングに投げかけ、ワドは憂いげに瞳を曇らせる。
「俺はお前を守りたい。この船にいる全員を守りたい。でも俺だって選択しなければならない時がある。その時は、何があっても船長を守る。ウィング」
ゆらゆら揺らめく魔力の中へ足を踏み出しながら、ワドはやっぱり冷たくウィングに言い放った。
「お前が誰と手を組もうと、誰を信じようと、裏切ろうとだ。俺はお前を信用する。裏切られると分かっていてもな。天使科悪魔クリアス・ウィング」
あまりに単調な宣戦布告は脅迫めいていて、ウィングはゾクリとした悪寒に見舞われた。
「あ、ワド!!」
「…なんだ」
「ケガはないの?」
「ケガがあったらそれが致命傷だ。一発食らえば即死の攻撃しかしてこない」
「それでもすごい爆炎だったんだから」
「分かっている」
心配かけたのなら謝ると言ってワドはシルンをあしらった。
「俺の居場所が魔界に知られている。お前のことが知れる可能性が跳ね上がった」
「いいよ、捕まるんならそれが俺の命日!」
「にならないように気を付けろと言っている」
「いいだろ、にしてもお熱いねぇお二人さんは。いい加減キスくらいしてあげたら?」
「俺があいつを殺せたらな」
「ハハ、希望はなさそうだねぇ!」
「変なの」
「あ、聞いてたなシルンちゃんめ。悪い子がいるぜ!!」
テルは嬉しそうに笑った。
「あたしがワドに殺されたらキスしてくれるの?」
「そうだな、お前が嫌がりさえしなければ」
「お熱いねぇ、二人とも」
テルは最高の笑顔を浮かべた。
冗談だと分かっているから。
ワドは俺のもの…
「約束だからね!!」
「分かった分かった」
シルンは何気なくワドに抱き着いた。
「…」
「キャプテン、ちょっと顔が怖いよ」