☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「あっワド!!」
「…楽しんでるようだな」
「相変わらずの美貌だなワド。似合ってるよ」
「それはどうも」
絶対お世辞だと言わんばかりの疑わしい目で冷たく返すワド。
確かに似合うよなっ、とキラキラの笑顔でテルが言う。
「…食うか」
「やったーっ!!ワドお手製!?」
「俺がシルンに作らせたと」
「違う違う。でもウトウトしてたからさ」
「わざわざシルンをこさせなくても呼んでくれれば」
「ちゃんと休めよ?」
「……分かってはいる」
青色のかき氷を流木に腰掛けているキングに渡すと、ピンク色のかき氷をもってワドはテルに近づいて行った。
「わりぃな」
「いや」
「なあ、これ見てみろよ、線香花火って言うんだぜ」
「綺麗だな」
「だろー?」
遠くで打ち上がる花火の光にまけじと輝く儚い光の玉を嬉しそうに見つめるテル。
ブルブル震えて落ちてしまう。
「あっ…」
「足の上でやるな。危ないだろう」
落ち込むテルにワドが諭す。
「空見てろよ」
先ほど買ってきた手持ち花火の半数がバケツに放り込まれている。
打ち上げられてるのに、とたったままワドが言った。
「お前のこと待ってたの」
テルは隣にワドを座らせて肩に頭を乗せた。
「離れろ」
「照れてやんの」
「違う」
押し返されてぐわんと揺らいだがテルはそういえばさ、と瞳を輝かせた。
「シルンともうキスした!?」
「するか」
即座に否定されて、ちょっとくらい照れてもいいだろとテルがむくれた。
「でもあいつコクったろ!?」
「ああ。付き合ってくれって言われた」
「キスくらいしてやれよ。かわいそうにさ」
なのに嬉しそうなテル。
まだしてないんだと笑った。
「お前が妬くだろう」
「まあね。でもワドは俺一筋でしょ?」
「気持ちが悪い」
「ひっでーの」
「安心しろ。仲間としてお前は一応大切だから」
「シルンは?」
「あいつも仲間だな、俺の位置づけとしたら。妹か」
「アハハ、シルンかっわいそ~」
全く女として見られていない。
テルはやったね、と笑う。
__ワドはやらないから。
ここ数週間、ずっとこの星にいる。
衛星を持たないこの星の海には波もない。
静かな海と月のないよるがテルが気に入った理由だ。
ワドが買ってきてくれた花火も楽しい。
それに、この星には…
「いい加減新しい仲間とやらを探して来い。もうすぐここを出たほうがいい」
「ん」
テルはトロンと落ちかけた意識を浮上させてワドにいう。
「眠い」
「分かってる」
「ひざ枕して」
「…」
「一人で寝たくない」
「…キングー」
「はいはい回収ね」
テルはキングに担がれて船内へ放り込まれた。