☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「ところで俺はご主人さぐおぇっに呼ばれてるんだ。場所を知らないか」
「…湧いて出た…」
キングが拳を振りかざしクリティカルヒットを決めるとワドはガクンとひざを折り前転して起き上がった。
「あのなぁワド、俺はお前殴るためにこんなことしてるんじゃないんだからな?」
「初耳だ。てっきりサディストかと思っていた」
「…」
腕をクロスさせたまま無表情に言ったワド。
キングは軽く構えて中段回し蹴り。
「…俺がSならお前は何なの?」
直前で止めて不敵に笑ったキングにぞっとしたワドはシルンを片手に逃げた。
「逃げられましたね…」
「しかし愛しのL君を死神に差し出してよかったの?」
「…いいんです…仕返しですから…」
「余計ダメだろ」
そしてまたキングは消え去るのだった。
「…」
「よっ」
「…」
「ん?」
「…」
「どうしはった?」
「…ゴシュジンサかはっ…何処に行かれたのですか」
「しらん☆」
「ごめんなさぐふっい、俺が作るので料理のことは気にしないでください」
「おい、意地でも言い切るのかよ」
鳩尾に追撃を受けながらもゴメンナサイを何とか言い切ったワドは満身創痍でキッチンに立つウィングを上目使いに見上げる。
「ええねんて、気にしんといて」
「やらないとご主人さ…」
「…」
蹴りが飛んでこないのを不思議に思ってワドは途中で言葉を止める。
キングはあきれてため息をついた。
「だからさお前、蹴られるの覚悟、つか分かってて言ってるだろ」
「…まにこの船追い出されるんです」
「なんでやねん」
「存在価値が下がるからです」
「おいスルーするなよ愛すべきワド」
「…ごめんな…さ…い…」
蹴りが飛んでこないのでスムーズなはずの謝罪も途切れ千切れだ。
「なぜ…蹴らないんですか」
「蹴ったってお前が傷つくだけだから」
微笑んでキングは血のように赤い手袋越しにワドの頭をわしゃわしゃとなでた。
「…」
「上目遣いやめとけよ~勘違いされるぞ~」
「されません」
何とはなしに手袋を見ていたワドは言われて視線を外す。
「言うなよ、今度から別の罰に変えるからな?」
「…」
返事はせずにふわりを呼んでワドは自室へと戻った。