☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「よう!」
「探しました、ご主人様」
深く、深く頭を下げた後膝をつきベッドに腰かけているテルの足元へ両手を伸ばす。
いつもの“儀式”だ。
「ほんと、お前って馬鹿」
土のついたスニーカーのつま先に舌をつけて顔色一つ変えずにその泥を咀嚼するワドにテルは顔をしかめた。
「きたねぇぞ、その土」
「…」
「おい、聞いてんの?」
「はい」
従順なワドは飲み下した土に眉一つ動かさない。
「いい加減に“できない”ようになれよ」
「…できません」
「お前とは“友達”でいたいの。分かる?」
「…理解…しかねます」
「なぁ、大丈夫なのお前。震えて…」
「大丈夫です。問題ありません」
「大体あるんだよなぁ」
ペタンとテルが床に座り込むとワドはようやく表情を見せた。
「ごめん、要件聞くの忘れてた」
「水晶…の件です。全て製品化が終わったのでご報告を…」
「また一人でやったの?」
「当然です」
「いい加減にしないと体ぶっ壊れるぞ」
「何故壊れたらだめなのかわかりません」
テルは俯いているワドの表情を見ようとグイッと首をそらせる。
「なんで俺と二人っきりだとそんなに怯えるの?俺以外の奴ならいいんだろ?」
「…」
「ねぇ、何で?」
「ご主人様だからです」
それ以外のなんでもない、そう言ってワドは唇をかんだ。
「いい加減にしろよ」
「っ」
「何で怯えるんだよ、何でだよ…っ!」
「ご主人様、ごめんなさい、ごめんなさい」
「何で、何で、何で何で何でなんでなんでなんでナンデナンデナンデ!!!」
呻いてテルは苦しそうに倒れる。
ワドはひどい罪悪感に吐き気を感じた。
「ホセ…早く…人間に…なれよ…っ」
「…」
しっかりと目を閉じワドはすべてを押し流す。
一言、出ていけと言われないためだけに。
嗚呼、恐い。
「大好きなのに…何で…分からねぇッ…!」
テルは、眼光鋭く入口の扉あたりをにらんだ。
「ワドを傷つけたら、許さねぇからなぁぁぁ!!!」
ウィングはフッと息を吐いてにやりと笑んだ。