☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「平和ですね…」
「そうですねぇ…」
「お茶飲むよりカラオケせぇへんか!?この船設備あるんやろ!?どうせ!」
「どうせってなんだよ風。ワドに聞けよそんなもん」
「かぜぇぇぇぇ!?直訳すんなよ船長さん!?」
「いいじゃねえか」
「良くないわっ!!絶対良くないっ!!」
「おもしれぇなぁ、お前。見てる分には」
「…」
ガラス製のカフェテーブルに座って向かい合っているテルとゼロ。
さっきまでワドが立っていたポジションにはうるさいウィングがいる。
執事または使用人、またはボディーガードのごとく突っ立ったままソーダを何杯もなくなっては注ぎ、なくなっては注ぎを繰り返していたワドに比べると、からのビンをすっ飛ばすウィングは正反対のタイプに見えた。
「本当にこの船は個性派ぞろいなんですね」
「悪かったな(笑)」
「…」
どこか凄みを含んだ笑顔にゼロは黙るというより疲れたように微笑んだ。
「別にさ、ワドだけが強いんじゃないんだぜ、俺たちだってさ」
「…L君より強い人がここにいるんですか…?」
「いませんね、実際。でもまぁ、俺は互角くらいにはいってるかな?シルンは俺たちに比べたら全然だけどさ、結構強いよ。基本体力すげぇもん。それに度胸もあるし。そこらの将軍より使えるぜ?」
「将軍…ですか…」
「ですよ。それにウィングとキースもつえーだろぉー?」
「そりゃなぁ」
けらけら笑いながらテルはグイッと水色の液体を飲み干した。
「謎なのはおまえ、だなぁ…」
「…私は戦闘だけならできます…魔界は物騒なのでたいていの悪魔の戦闘力は高いですよ…」
「なーる」
「…でもL君には勝てませんけどね…」
「なんや、そんなに強いんか?」
「L君の底なしの魔力には敵いません…どうしても魔法は最も有効な手段なので…」
「魔導士とかなんかの特化系魔法使いなんか?」
「いんやぁ?」
特化系魔法使いというのは特定の魔法にのみ異様な魔力を保有する天使や悪魔のことだ。
今のところ、神の特化系はいない。
魔導士とは、いろいろな自然のものから魔力を引き出す者のことだ。
その代わりに夢術が弱いことが多いので、もっぱら魔法しか使えない。
「理由は一つ、あいつが天才だからだっ!!」
「何やそれぇっ!!」
すぐさま入った突っ込みにテルはケラケラ軽快に笑った。