☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「ハイホー、ヘイホー、しごーとしごと♪」
大気のない荒れた星についた船から、テルが妙な節をつけて歌っている声が聞こえる。
シルンと協力しつつ、手早く帆を外し、新しいものに取り換える。
「たぁらったたたたたハイホー、ヘイホー♪」
「…うるさいんだけど」
「ヘイホー、レッドー、シールーでぺったんこー♪」
「…著作権侵害なんじゃない?」
「てぃりってててててヨッシー、ワッホー♪」
「…知らないから」
シルンは楽しそうなテルをしり目に帆を張り終わって甲板へと降りる。
テルは楽しそうに歌を歌っている。
「てれっててれれん♪ちぃりーん♪てんてんてん、てっててれ、ててててっててっててれれん♪」
「…」
完全に著作権法違反だわ、なんて冷たい視線を向けながらシルンは後ろに冷たい気配を感じて振り向いた。
「あ、ワド!」
「…しるん…あぅ、あ…ゴシュジンサマ…ドコ…」
「どうしたの?大丈夫?」
波に揺られているかのように焦点の合わない真っ赤な瞳を覗き込んでシルンが首を傾げた。
そういえばワドってたいていのときはこうやっていかれてるんだな、と頭のどこかで冷静に考えてみたりする。
「ぱっぱかぱぁん!ぱっぱっぱっぱっぱかぱぁん♪」
どこからかあの馬鹿っぽい歌声が聞こえてくる。
そのとたんにワドの様子が豹変した。
「ちょっと!?ワドったら!危ないってば、外真空なんだよ!?」
バタバタ手足を動かして子供のようにシルンの腕から逃れようとするワド。
シルンは逃がすまいと強く抱きしめる。
それでも少しずつずるずると引きずられて行き、ワドの指先がほんの少し真空に触れる。
「ワドっ!」
ワドは真空の先を睨み付け、どこまでも冷え切った声で叫ぶ。
「渡さない…ご主人様は…俺を…助けてくれたんだ…お前には…渡さないから…な…!」
闇に向かって悲鳴を上げるように叫ぶワドを見て、シルンは強くワドに向かって言い聞かせる。
「ワド…やめて、お願いだから…!!」
ワドは身を乗り出し、上半身が真空へと放り込まれた。
必死に引き戻そうとするシルンは、ふと、後ろに先ほど感じた気配の正体を感じた。
「…あんさんら、何やってんねん」
「ちょうどよかった、ワドがまたおかしくなってっ!!」
「そうかいな。わてもてつだうわぁ」
そしてシルンは足首をつかまれる。
両足が浮き、ワドは、シルン共々真っ暗闇の中へ落ちていった。