☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「いない、いない…」
テーブルの下、布団の中、物置、食器棚、ジャムのビン、注射器。
図書をすべて引っこ抜いて、キッチンの冷蔵庫を張り倒して、羽毛布団を切り裂いて。
キングはぐったりと椅子にへたり込んだ。
「居ない」
「ぼく、もう一回操船室見てくるね」
「私は地下の牢の拷問機を分解してきます…」
そろいもそろって船中を殺人現場のようにして回るキース、キング、ゼロ。
芝生は切り取られ、銃口は細切りになり、クッションは羽が抜かれてただの袋になっている。
だがどうせ勝手に片付くので、誰も気にしない。
何より三人はおかしかった。
キースは微笑みながらチェーンソーで空洞のある家具を切断して回る。
ドライバー片手にゼロは機械という機械を原子レベルまで分解して回る。
先をつぶした鉄パイプで甲板や舟板をはがして回るキング。
もしその中に彼らの探し人がいたとすれば、断末魔を上げる暇もなくミクロ単位に分断されているだろう。
そんな本末転倒の三人が探しているものは互いに同じようで違っていた。
「L君…どこに行ったんですか…君が死んだらα崩壊を起こさせられて存在できなくなります…」
要は問答無用で魔界からたたき出されてさらに地獄に放り込まれ、そのうえ死体になる前に原子にされて崩壊を起こさせられるということだ。
文字通り“消される”。
ゼロはいろいろ複雑な事情を抱えてワドを探し回っているのだった。
「テル、テル…パーティーゴールド…うぅ…」
キングは単純にテルに会いたいのだ。
というか、見つからないという事実にふたをしたいのだ。
さらわれたという事実にはさらに気が付きたくない。
しかしキングは飛んで飛んで浮かんでいるのはバラバラ死体。
「ウィング…どうして消えたの…?」
キースは最悪の、いや、ウィングにとっては最高の、シナリオから目を背け続けた。
ああ、シルン?
どうでもいい。
この三人にとっては、人間界の降水量並みに。