☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
何時間たっただろう。
三人は疲れ果て、互いの背中に持たれかけて空を仰いでいた。
「やっぱ、連れ去られた線が濃厚ですね…」
「…」
ゼロに二人は無言で同意する。
キングは頭を抱え、俯いた。
「でも、この船の航路、一体だれが知ってんだ?ワドは闇の情報屋に染まってるんだし、表舞台に出ることなんてほとんどないと思うけどさ」
「…」
それはいいことなのだろうか。
闇にどっぷりつかっているワドの身を案じ、ゼロはふうとため息をついた。
「L君は賢い子ですから、万が一にも敵と認識している者に居場所を悟らせたりしません…」
「…」
賢い…子…?
一体この二人、どういう関係なのだろう。
謎多き美少年にまた一つ不可解な謎が増えた。
「じゃあ船長?いや、あいつも捕まってたっけ」
「…」
船長の後になぜあいつ…?
敬称が皮肉に聞こえるほどの軽い口にゼロは首を傾げた。
「不安ですね…まさか牢に抱き枕はないでしょうし…ちゃんと眠れているんでしょうか…L君…」
そのL君は抱き枕がないと寝れないのか。
いったい何年前の話だと言いたくなって、ふわりの溺愛ぶりを思い出し、キングは口を閉じる。
…変に子供っぽいとこがあるからなぁ…
「シルンの奴もさ、あいつ何故にワドのお守に回んねぇんだ」
「…」
シルンちゃんはL君のおもりではないと思います…。
そう言いかけて言えず、ゼロは言葉をのみ込んだ。
「ねぇ、僕」
「何だよ。俺よりお前の方が年下だ」
キングがつぶやいたキースをにらむ。
「僕…三人の居場所、分かる。それに、ウィングの居場所も…」
これが俺の生き方だ…
嗤うウィングを頭から振り払い、キースは力強く言った。
「ウィングを…ウィングを、助けてほしいんだ」
キングは静かに嘲る。
「非戦闘員を見くびんなよ、あの餓鬼」
“死神”キングの眼光が、鋭く輝いた。
ゼロは遠い目をして、急ぎましょうか、と微笑んだ。