☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「…もうそろそろかいなぁ…」
ウィングは兵の間を走り抜け、かけてあった迷彩柄のフード付きのローブをかすめるようにとる。
それをかぶって監獄をでて、海岸に向かった。
海岸には一隻の船。
ヨットに近いその小さな船は今にも壊れそうだった。
ウィングは立ち止まり、用心深くあたりを見回す。
船を壊した犯人がいるはずだ。
それにこたえるようにクスクスと笑い声が聞こえた。
それは次第に大きくなり、やがて爆笑に代わる。
「…」
真空状態のこの星での高笑い。
妖精なら環境適応で生きていられるが、誰だろうか。
「あア、おもシろいなァ。うらギりもノはゆるさナい」
そしてまた、高笑い。
ウィングは底知れない狂気に身を震わせた。
瞬間、足元に深い亀裂が入った。
ウィングは慌てて後ずさる。
当たったところから切断されそうだ。
しかし間を入れずに数発放たれたらしい。
一発手持ちのワイヤーで受けると、めったなことでは切れないそれが紙のように簡単に切れた。
「…っち」
こんなに押されるなんて。
ウィングは舌打ちをして見えない敵をにらむ。
「来るなら来てみろや…っ」
見えない斬撃がまた放たれ、死神の鎌のようにウィングに襲い掛かった。