☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「ゼロ!!」

テルは目のまえで戦っているゼロを見ていた。

だが戦況は圧倒的に不利で、ほらまた氷の壁が行く手を阻む。

不健康そうな体を引きずるように、物凄くだるそうにしているが今に始まったことではないので疲れていると言えばそうなのだろうがそうとも言い切れない。

ワドは目を覚ますこともなく泡を吹いている。

こっちの方が幸せだろう。

テルは思った。

起きてたとしたら心労で頭がおかしくなっていてもしょうがない。

何しろ苦労性なのだ。


ガン、と鈍い音がして驚いてテルはワドに向けていた視線をゼロとアイスへ向き直す。

吹っ飛ばされたらしいゼロがガシャン、と音を立てて崩れていた。

そう、文字通り。

“崩壊”していた。

その音で目を覚ましたのかワドが大きく瞳を見開いてわなわなと震えている。

あ、やべとテルが面倒事になりそうだななんて思った。

「ゼロさん…!!」

珍しく動揺した声で(結構まともな方だった)いったワドは助けを求めるようにテルを見た。

だがそれはどうも自分ではなかったようで。

「ご主人様…お願いです…ゼロさんを助けて…」

「…」

現状の把握を先にさせろ。

テルはワドを一瞥して“壊れた”ゼロを見ていた。

治療には医者(ドクター)より技術者(エンジニア)の方がいるかな…

バチンバチンと火花を散らせる“ロボット”は形状記憶合金で、自身の持っていたライターでとれていた腕をつけなおし、プラモデルのように“機械”的に動作を確認するのだった。


「だから嫌いなんだ…心を持つアンドロイドは」

特に変なところで冷たいやつは。

夢術も魔法も持たない“ただのロボット”が大切な“罪人”を連れ戻しに来たと確認したアイスは左手を前に突き出してつぶやいた。


「全消去(フルロスト)」


瞬間、ゼロは飛びのいて、それでも間違いなく右手は跡形もなくもぎ取られて。

同時に人一人分の超低気圧(無)を埋めるため、強く風が吹いた。



「…ッ」

気に入らないが、ウィングはひたすら“死神”から逃れようと右へ左へ監獄内を逃げ回っていた。

通った道に死神の手が伸ばされるたび、あまりにもあっさりと人が死んでいく。

それについては何も感じなかったが、自分がその死体の一つとなることは避けたいので自分でもわからないほど多くの魔法陣を展開し、飛び込んだ。

気が付けば“奴ら”をとらえた監獄の前で、ゼロとアイスが攻防戦を繰り広げているのがわかった。


__なんや、すぐに片付くゆうとりはったのに…


「空気枷(エアーズロック)」

一瞬ゼロの動きが止まり、そのあと砕け散った。



「ゼロさんっ…!!!」

異様に幼稚に聞こえるワドの声が響いて、ウィングはフッと息を吐いた。


__そういやぁ、あいつ15やった。


じゃあ、「年相応」か。

そんなどうでもいいことを考えて、近くの牢に入っていた囚人がウィングのいたその場所で動かない死体となった。

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