☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「もうやめな」
静かなテルの声で我に返る。
「…」
シルンが声を失っているのがわかった。
ゆっくりと振り返った“キング”は変わり果てた姿をしていた。
「…」
白衣は闇を反射する黒衣に。
足元にはグラグラと死者の姿が現れては消えて。
両手の血のような手袋からは真っ赤な死がしたたり落ちていた。
「ごめんな、一緒に入れられちゃって」
顔の半分は、死に囲まれていた。
「パン…ドラ…」
アイスが呻いた。
「その名は捨てた」
“死神”
神科全能神(最高神)
キング
本名はパンドラ
夢術は“死”。その二つと存在しない夢術はすべてに死を与える「失われた御子」…
「ごめんな、キング」
「…いいよ。お前がいてくれるんなら」
キングは引きちぎった白衣を取り出して羽織る。
禍々しい穢れた空気は静かに去って行った。
「わりぃ、シルンは後から連れてくからさ、先にワド頼む」
「あぁ」
先にテルの拘束を解くが早いかテルはシルンとの間を隔てていたガラスをたたき割り、(若干シルンが怪我をした)シルンの鎖を引きちぎる。
「俺はウィングとキース回収してくよ。ついでにそのへんに転がってるパーツ集めといたげて。ワドが治してくれるでしょ」
キングはどこからか取り出した袋にバラバラになったゼロの残骸を拾い集め、放り込み、ヤダヤダ歩ける離せとふざけたことを叫んで暴れるワドを抱き上げて肩に担いだ。
「ごめんな、キング」
「…気にすんなよ」
いまだ叫んでいるワドを一度落として静かにさせて、キングは歩き出した。
テルは満面の笑みで見送ると、シルンに向き直った。
「いい?ワドは俺の物だから」
「…」
今言うか、それ。