☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

ウィングは追手が来ないことを確認して、新たに手に入れた小舟を浮かべた。


うまくいけば次の星まで行けるだろう。

行かなくても途中で遭難者を装ってほかの船に乗ればいい。


そのときふと気配を感じて、ウィングは振り返った。

「…なんや、キースかいな」

「うん」

片足を引きずりながら現れたキースにウィングは微笑んだ。

「いくで、次の船に」

「…」

うんとは言わず、キースは立ち止まる。

ウィングは怪訝な顔をして体ごとキースの方に向ける。

「なんや、やり残したことでもあるんか?」

「たくさんあるよ、ウィング」


ああ、こいつももう、俺の仲間じゃなくなったんだ。


ぼんやりとそんなことを考えて、それでも首をかしげてウィングは馬鹿なふりをする。

キースは優しいから、自分を絶対見捨てない。

希望的観測だとわかってはいても、それを信じていた自分がどこかにいることが腹立たしくて自嘲に近い微笑みでキースにささやいた。

「お前も、俺を裏切るんか」


キースは一緒に来てくれる。

どんな時でも俺を見捨てない。


「そんなことするわけないじゃない」


ほら、そうだろ?

キースはずっと俺といた。

いるしかない。


「ウィング、でもさ、もうやめよう」

「…?」

「僕はずっとウィングについてきたし、これからも一緒にいるつもり。だけどもう、僕らの船に帰らない?」

「キース」

キースがこんなことを言うのは初めてだ。

ウィングは咎めるようにキースの名を呼んだ。

「なぜ俺が、お前が、故郷を離れたか。忘れたんか、キース」

「忘れない。でも、ウィングと僕の目的は違うんだ」

「…」

「ウィング、ウィングのことは絶対に裏切らない。でも、もう僕は、ウィングにはついていかない」

ガラガラと大地が動いた。

「ウィング、ごめんね」

今まで何人も人を裏切ってきたウィングは、それを何とも思わない。

それを間近で見てきて、それでも殺されてもいいとキースは覚悟した。


なんにせよ、自分に船長は裏切れないから。

ごめんね、ウィング。

でも、ウィングの手にかかって死ぬんなら、それもいいかもしれない。

ウィングは僕の、大切な親友なんだから。


「…」

ウィングが笑った気がしたが、キースはそれを振り払い、土の牢を作った。



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