☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

“いつか”は突然奪われた。

あまりにも唐突に、簡単に。


「おはよう」

いつも通りの朝、ウィングは黒い翼を伸ばし、起き上がる。

「ああ、おかぁ様…」

大きなあくびを一つ。

隣で同じように大きくあくびをしたクラウドがねむいーと駄々をこねる。

「おきろよ、じゃないとつれてってやんねぇからなー」

「いやっ!」

自分も今起きたところだったが、ウィングはそういってクラウドを小突く。

素直に着替え始めた弟を心底いとおしく思った。

「おにぃちゃん、今日は虹の谷に連れてってくれるんだよ!!」

「そうなの?気を付けて行ってらっしゃい」

「はぁい!」

「なんか食べ物!!」

「はいはい」

虹の谷は涼やかな音を立てて木々が揺れ、透き通った水が滝になって流れ落ちる場所。

滝壺は深いが、冷たくて今の季節にはぴったりだ。

朝ご飯を食べて、パンがいくつか入ったバスケットをもって、ウィングとクラウドは家をとび出すのだった。

「気を付けるのよ~」

母親がそう言って見送った。


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