☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

起きたのは見慣れない天井だった。

体中に巻きつけられた包帯でまともに動けない。

隣をそっと横目に見てみれば見慣れた赤い髪の男。

反対側にはそれよりも見慣れたキースの横顔があった。

「!!」

自分で奪っておきながら、もう二度と開かない瞼とちぎれた片腕にショックを受けた。



旋風が巻き起こり、ウィングを包んでいた土の牢が吹き飛ぶ。

残骸がキースに襲い掛かって、キースはすばしっこくさける。

両足にあのスケートボードを留めて、めり上がった足元の土から滑り落ちていく。

ウィングは対抗するように竜巻を巻き起こし足元から体を浮かせる。

はるか上からキースを見下ろしながら、ウィングは両手の間に鋭いワイヤーを張った。

「…」

ウィングは風を止めて一気にワイヤーから落ちていく。

文字通り風を切り、キースに上空から襲い掛かる。

キースは大地を布のように動かして半球型のドームを作る。

「二重壁(ダブルガード)」

一瞬はじき返され、ウィングは跳ね返って形勢を整え直し、空からもう一度襲い掛かる。

今度は表層の土をはじき落とし、その下のドーム型の魔法の防御壁に到達する。

一瞬火花が散ってキースは義足を振り回すようにして反対の足を軸足にして自分を遠心力で飛ばす。

キースがいたところには深く亀裂が入った。

ウィングは本気だ、そう思ってキースは少し悲しくて、ぼやけかけた視界を無理やりぬぐう。

__何年も一緒にいたのに、その時間さえウィングにとっては取るに足らないものなのかな…

「蟻地獄(アント・ヘル)」

突然地面に円錐を逆にしたようなクレーターが出来上がる。

さらさらと泥のように雪崩れ堕ち、中心で地面の穴に吸い込まれていく。

ウィングは音もなくワイヤーで地面を斬った。

真っ二つに割れた逆円錐は自然と元に戻って平らになる。

キースは地面から岩を作り上げ、砕いて飛ばした。

轟音がとどろいて、キースのつぶやきをも消す。

ウィングは土煙の中に消え、晴れたとき、よけきれなかった石に当たったのか左肩を押さえて倒れていた。

キースはさっと青ざめる。

敵対していたことなと吹き飛んで、ウィングにそっと近寄った。

「ウィング…?」

恐る恐るウィングの顔を覗き込んで、まだ生きていることにまずほっとする。

キースは何かが飛んでいくようなものを見た気がして、静かに振り返る。

その瞬間、すべての音がキースから消えた。
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