☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
結局、キースは一人であのメインルームに向かった。
きっと有り余るほどの食事がガラスのテーブルを彩っているのだろう。
と、さっそく騒がしい声が聞こえてくる。
「よぉ、キース!!」
テーブルを囲んでいたのはテル、キング、シルン、ワド。
そこにキースで五人だ。
「あれ、ゼロは?」
「ああ、あれはまだ壊れてる」
壊れてるってどんな状態なんだろう。
ゼロが人造人間であることはまだ知らないので、キースは首を傾げた。
精神が?体が?
そう聞きかけていややめておこう、とキースは思った。
テルのことだから、きっとこういう。
は?もともと壊れてたじゃん。
…あとで絶対にお見舞いに行こう。
「どしたのキース。暗い顔して?」
「ううん、別に…」
「キングに突っ込んであげなよ。ここは俺がきちんと説明したいんだけれど」
「僕、自分がこんなだからさ、あんまり人の見た目にはこだわらないんだ」
「いいから!キング、何があったの!?はい復唱!」
「キング、何があったの!?」
言わされたに近い疑問を投げかけられて得意げにテルが胸を張った。
「よくぞ言ってくれた!」
__超直接的に言えって言ってたけど。
シルンが完全無視を決め込んでテルが作ったのであろうオムレツに手を伸ばした。
「あんまり突っ込まれると困るんだけどさ、数日このままね。誰彼構わず切りかかってくることあるから気を付けて」
「…」
キングは黒い服に、顔には仮面のような闇が半分張り付いている。
かなり危険そうだが襲ってはこない。
それもテルがしかと左手でキングをとらえながら右手で器用にナイフを使っていたのだ。
左手どころか両手も使えないワドに時たまフォークでサラダを貫いては与えている。
結局レタス4㎠で終わるのに、しつこく突き出している姿には何か執念のようなものを感じさせた。
「何つったてるの?キース。早く食べればいいじゃない」
「あ、あ、うん」
乱雑に色々なものがおかれただけで、どちらかといえばバイキングに近い皿からシルンの真似をしてオムレツを取る。
確かにおいしかったけど、中身に目をやったら食欲がマイナスに振りきれそうだ。
「テル、もうちょっと見た目に気を使ったら?」
「うるせーな、俺ワドじゃないもん。でもいいだろ、うまいんだから」
「そうだけど、見た目がまずいの」
「分量計って勝手に混ぜただけなんだからしょうがないだろ。でもさすがワドのレシピ。うまいよなぁ、キース!」
いきなり話を振られてキースは曖昧に頷く。
「そういえば、よかったの?ゼロの食事。生肉依存症みたいになってたけど…」
「だから分解されてるんだって」
ぶ、ん、か、い?
よくわからないなぁ、とキースはため息をついた。
「精神が?体が?」
すると先ほど予想したものとそう変わらない答えが返ってきた。
「は?精神も体も、もともと壊れてるもんどうやって壊すんだよ」
「…」
実際に言われたショックも計算して聞くべきだったかなとキースは今更後悔した。