☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「…」
一方ワドは、ウィングのいる医務室へとんぼ返り。
半ば脅迫的にサラダを食べさせられて胃がもたれたのだ。
薬をガサガサ探して、粉状の薬を発見してから水なしで飲み込むと当然のようにむせかえる。
仕方なく水道に行ってコップ十分の一くらいの水を飲んだ。
「…何やってんねん」
「…」
呆れた顔で半身起こしてこちらを見ているウィングに喉を指さして両方の指をクロスさせているワド。
「…喉、やられたんか?」
「…」
ワドは力強くうなずいた。
「…そんなよろよろで、寝とればええやないんか?」
「…」
ぶるぶると首を振ってワドはトコトコ遠ざかる。
…トコトコというよりは、ずりずりに近かったが…
まともに歩けていない。
「…」
ウィングは呆れて頬杖をついて、まめまめしく動き回ろうとしている(頑張っているのはよくわかるのだ)ワドを眺めていた。
どうやら頭にイメージしているのと実際とがずいぶん違うようで、ただただうろうろしているだけに見える。
「無駄やないんか?疲れるだけなんやからやめとき」
「…」
無視された。
ウィングはふらふら点滴台と一緒に歩き回るワドを見ていた。
「おいおいワド、何やってんだよ」
「…」
ワド曰く我がご主人様が現れて、杖なのか何なのか分からないモップを持っているワドに近づく。
ワドは慌てているのかそれともただ動こうとしただけなのか四苦八苦しながらモップを動かしている。
「いいこして寝てな」
「…」
パシン、とモップをもぎ取られてしまい、何か言いたげに点滴台に捕まり視線をそらしている。
「はいはい、頑張ったのはよくわかったからもうストップね」
「…」
不服そうだ。
そんなことを言ったって、眉毛一本動いていないのだけど。
「ちょっとは甘えることを覚えなさいっての、お前はもう」
「…」
絶対学習するものかとワドは去って行く。
「ったく、あいつは…」
テルは言葉とは裏腹に楽しそうだ。
ウィングは気が付かれないようにふっと息を吐いた。
「なぁウィング、ちょっと来いよ」
滑り落ちるようにウィングはベッドから降りて、テルの後を追った。
「…」
「ワド、あのな、俺の目を盗んで頑張ろうとしない!」
「…」
音もなく背後に立っていたワドはあっさりとテルに捕まり、背負われながら申し訳程度にゆらゆら足を揺らして抵抗していた。