☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「…ウィングさん」
「…」
「ウィングさん。L君が泣き止まないので…早く起きて下さい」
「…!!?」
この特徴的なしゃべり方…はしてないが。
この声。
「あ、あぁ!?」
「良かったです…L君を呼んできます…」
ふらっと消えてしまった。
ウィングは消えてしまったゼロを見て、そのあと慌ててあたりを見回す。
どうやら、医務室らしきところだ。
とりあえず牢屋に入れられてはいなかったらしい。
ほっと一息ついて。
両腕につけられた鎖にドキッとして反射的に引っ張ってしまい、かちゃっとなった。
「!!」
心臓に悪い。
拘束されるのは嫌いだった。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「!?」
「え、L君!!落ち着いて下さ…うぎゃぁぁぁ!L君!!」
一体何があったんだ。
ウィングは天地がひっくり返ったくらいの衝撃を受けた。
一つ目はあの万年(?)低血圧のゼロがぎゃあぎゃあ叫んでいること。
二つ目はあの万年(?)ご主人様至上主義のワドが人様に迷惑をかけていること。
「…ウィング…」
「L君!!」
どうやら半乱狂モードのようだ。
綺麗な髪はずいぶん乱れてしまってる。
両腕はだいぶ治っているようだ。
ということはだいぶ時間が経っているのだろうか。
「大丈夫だ。ぎりぎり正気は保ってる。安心してくれゼロ」
「今のセリフのどこに安心するポイントがあるんです」
「正気は保ってるのところだ」
「…L君」
鼻の頭を強くつまんでゼロがうなだれている。
こいつ苦労性だな、と思った。
「ウィング、体の調子は」
「…おかげさまで」
「それじゃわからないだろう」
「…上々」
「それはよかった」
なんだ、全然よかった感がない。
ウィングは上体を起こそうとして激痛を感じ諦めた。
「やめろ。テルがひどくやったらしい。肋骨が粉々だ」
「…」
粉々なのか。
「そこまでじゃない、だが起きるな、動くな。できることなら息もするな」
「…無理」
「だろうな」
何で言ったんだ。
「お前が倒れてからだいぶ時間がたった。見ての通りゼロは元に戻った。ちなみに多少アップデートしたから少し仕様が変わっている。俺の両腕も完治した。テルもなんとか怒りを収めた…たぶん。キングも相変わらず嫌な奴に戻った」
「嫌な奴って今はっきりと…」
「それと、キースのことだが」
言いかけてワドはいや、と首を振った。
「自分で見たほうがいいだろう」
「…」
「あいつは怒ってない。なぜか俺を追いかけまわして絵を描かせてくれとわめいてるだけだ」
「…」
なんか、ワドの言葉にところどころに棘があるのは気のせいだろうか。
そこのところも知りたいとウィングは強く願った。