☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「おい!?」

「染色体X入ってるんだよ!?」

「うっせーな黙ってろキース!!」

「ひっ!?ごめんなさい!?」

「…」

殴られたキース君が頭を抱えてうずくまる。


「まずはお前の素性からいこう」

「まってまずこの状況から説明をお願いします」

「そういう紳士的な対応はワドに求めろ!!俺たちは知らん!!」

何を堂々と…

ワドというのはこの人の保護者か何かだろうか。

「だって、誰かわからないのに名前とか言えるわけないですよ!」

「あーもう、俺は神々の星賊団船長“流星”パーティーゴールド、通称テル!」

「へ…?」

何そのふざけた名前は、といいかけて、聞きなれなさすぎる単語がいくつもなざっていることに気が付いた。

「呻いてんのがキース!うちの船医兼画家!!」

「…」

「…」

「…」

「おい!!俺名乗ったよな!?ふざけんな不公平だぞてめー!!」

「…」

そうだ、きっとこの人、頭が可哀想な人なんだ。

キース君は精神科医かなんかでこの人の主治医をしてるんだろう。

若いのに苦労してるんだな、私とそう年も変わってなさそうなのに。

きっとさっきのワドさんは保護者かなんかだ。

うん。

「…船長、ちょっと難しいんじゃない?僕が彼女でも僕らのこと怪しむよ」

「うっせーなだってワドいねーもん」

「…じゃあ、ワドが帰ってきてから話をつけよう。きっとワドのことなら信用できるよ。何せ見た目がまじめだもん」

「中身もな」

「うん。…どう?こんな真空のど真ん中に放り出されても困るだろうし、しばらくここで過ごしなよ。名前も聞かないし、女の子もいるよ。ちょっとくせがあるけど…それに、明日には副船長も帰ってくるんだ、その人の説明ならきっと納得できるよ」

「…」

ほとんど一方的にそう宣言されてから、二人は出て行った。

しばらく一人の時間が続き、次に入ってきたのは銀髪の女の子だった。


「はぁい、私はシルンことシルバーレインボー。シルンって呼んでくれればいいけど」

「あ、はい」

「あのあほ船長に何かされてなかった?変態だから下着とか抜かれてない?」

「は、はい!?」

つい声がひっくり返った。

緋香莉は慌てて服を確認する。

そして抜かれるも何も服が変わっていることに気がつき、ほっと息をついた。

「はじめまして」

「…はじめまして…」

ふつうこれが最初だよね、と思いながら差し出された手を握る。

「あ、ごめんごめん、ワド以外のこの船の奴ら、本当に順序立てて話すってことが苦手なの。つかできないの。無礼で乱暴、そのうえ変態」

少なくともキース君はそうではないのでは、と緋香莉は思ったが、怒涛の如くしゃべり続ける女の子に気圧される。

「それに比べてワドときたらほんっと王子様なの。イケメンだし、強いし、頭いいし、料理うまいし優しいし、何より紳士的。あなたを拾ったのがワドだったら絶対惚れこむ!!」

「あ、はい」

後半は完全にのろけだ。

この子はきっとそのワドさんが好きなんだろう。

ということはワドさんは男か?

「楽器も弾けるし働き者だし。表情に乏しいこともあるけどクールっていっちゃえばほんと完璧!!天才!!大好き!!」

「…」

初対面の私にそこまで言うのかこの子。

「…あ、そういえばこの船?に女の子ってあなたしかいないんですか?」

「あ、うん。そういやそうだわ。どーりであいつら変態なわけだ!!」

「…うん。それは分かりました」

十分すぎるほど。

「あ、でもキースはそうでもないかな。ほかの船長含む大勢は個性的過ぎて嫌になりそうだけど」

「…」

あなたも十分個性的ですが。

「え、大勢って、他に誰が…?」

「ん?まずうるさいテル、こいつが船長。で、次にうるさい…一緒ぐらいか、ナルシストのウィング。で、次はそこまでうるさくないけど恐ろしい陰謀を企ててそうな心を開きたくないカウンセラー、キング」

…それ、カウンセラーになってなくないですか。

「アンドロイドの不健康隈男、ゼロ。で、船医のキース。あとは副船長のワドね」

「…」

「覚え方は、やかまし船長きらっきら、自分が大好きバカウィング、おなかが真っ黒恐怖のキング、ゾンビの親戚寸前ゼロ、優しい天使キース、イケメン完璧副船長ワド!!」

ほとんど罵詈雑言と変わらない。

「ってなわけで、今日はもう寝たら?寝れないんならいいけど」

「あ、はい」

確かに体がだるい。

唯一悪口が出てこなかったワドさんとはどんな人なんだろう、と思いをはせながら、緋香莉は眠りについた…


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