☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「まずは、お前のいるこの船についてだ…

お前が寝てるのは医務室のベッド。スクールの保健室だと考えてくれればいい。

この船は今デス・プラネットと呼ばれる銀河にいる。このあたりの星域は特にブルー・マリン星群と呼ばれているな。表面温度が高い恒星ばかりが集まっているから遠くから見ると青い海のように見える」

「ってことは、船ってロケットみたいなものなんですか?」

と、ヒカリは尋ねた。

大体、ロケットにこんな広い空間があるわけないと思うのだが…

「ロケット…ああ、アースが星ぐるみで打ち上げてる鉄の筒のことか。いや、どちらかというと普通の船だ。ただし柔軟性を考慮して木造のだが。お前らの船は劣化しないように金属なんだろう」

「…そうですけど!!でもそれじゃあエンジンが…」

「エンジンは緊急用に使うだけだ」

「え、じゃあどうやって進んでるんですか?」

「…習うより慣れろとはこういうことなんだな。まあいい、いったん甲板に来い」

そういわれてヒカリは半ば強引にベッドを降ろされ、ふらついた体をワドさんが受け止める。

「きゃっ…」

無駄に細いと思ったが、見た目よりもさらに華奢な体。

それなのに揺らぎもせず動揺すらせずがっちりとヒカリを抱え込んでいるワドさんはいったいどんな体をしているんだろうとヒカリは心底不思議に思った。

「あの、何をして…」

「魔法陣だ」

「マホウジン?」

「魔法に円陣の陣だ。魔法陣。主に移動系魔法に多く使われる、魔力で作る円のことを言う」

そんなの、ファンタジーの世界でしか見たことない。

それも、かなり小さい子向けの…

「ほら」

そういってワドさんは半透明の円を指さした。

円の周りには青っぽい光が集まって、見たことないような文字を作って動き回っている。

「なに…あれ…」

「現実を受け入れろ。これは移動系魔法“空間操作”だ。一つの魔法陣を同時に二か所に存在させ、それをくぐってもう一方の場所へ移動する」

「…」

「理解しなくていい。この辺はこっちの世界でも一つの学問として確立されている“魔法学”だ。使う分には理屈を理解していた方がいいが、お前には関係ない。興味があるなら教えてやる」

顔だけではないようで、博学らしい。

「…地球の重力がどのくらいかは知らないが、少し違うかもしれない。めまいにいた現象が起こるかもしれない」

「はい」

「それとだ。ここにいる奴らは船長以下全員かなりの美形だ…俺みたいに例外もいるが。あんまりきゃぁきゃあ言うなよ、船長が怒るから」

「…」

船長とやらはずいぶん怒りっぽいみたいで。

だけど…「俺みたいな例外」ってどういう意味だろう…

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