☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
ヒカリたちが魔法陣をくぐると、ワドの言う甲板に出た。
「わぁぁぁぁ…!!」
「…楽しいか」
ヒカリはわき目も振らずに手すりに駆け寄る。
そこはまさに。
「360度プラネタリウムだぁ…!!!」
「…」
満天に広がる星空。
星はどこまでも遠かったけれど、一等星以上のまばゆい光を放つ青い星がところどころに輝いている。
「左前方を見ろ…惑星だ」
ヒカリがそちらを見ると、赤い光があり、その周りをゆっくりと白い星が回っている。
「すごーい!!」
「…ちなみに、あの星、周回速度は音速を軽く超えるぞ」
「嘘!!あんなにゆっくり回ってるのに!」
「…星が好きなのか」
「そういうわけじゃないです」
「ちがうんかーい!!!」
「!!」
いまのツッコミは誰か…
ちなみにもちろんワドではない。
あの冷静沈着なワドがそんなことをするはずがない…
それなのにヒカリは一瞬想像してしまってブッと噴き出した。
「あ、はじめましてやんな、俺ウィング!!」
「…」
「ドン引きしてるぞ」
「おねーさん名前と連絡先…」
「アホ」
ば、こん!!
とワドがウィングの頭をはたく。
「初対面の少女に向かってお前はなんてことを言ってるんだ。この変態」
「へんた…!!」
「変質者。女たらし。イケメンなだけじゃ女にはモテないぞ」
「はぁ!?」
ざっくりと斬りつけたワドはヒカリを振り返った。
「この変態の言うことは気にするな。女に対してはいつもこんな感じなんだ」
変態変態言っているけれど、ウィングだって相当の美少年だ。
ただ、どっちかというと片耳のピアスのせいでチャラい感じが出てしまっている。
ちょっとこういう人苦手かな、とヒカリは軽く会釈しただけでまた星空に目線を戻した。
「星が好きではないのに星空は好きなのか」
「っていうか…」
宇宙って言われたから、確かにそんな気がするだけで、まるでイルミネーションのようで綺麗。
「そうですか」
もっと包まれたような感覚に浸りたくて、ヒカリは身を乗り出した。
「おい」
と、ヒカリはワドによって引き戻される。
「あまり身を乗り出すな。外は真空だ。落ちたら死ぬぞ」
死、という言葉に身をすくませて慌ててヒカリは手すりから離れた。
「…どうした」
「だって…あ、危ないんですよね!?」
「たしかに危ないが。そこまで警戒するのか」
なんだか物凄い温度差が…
ヒカリは戸惑った。
だから、よぉ、と言う声に気が付けなかった。
「おい、お嬢さん」
「は、はぃ!?」
「うわ、垢抜けねぇ…」
「あい!?」
「…キング、とても失礼なことを…」
「いいだろ」
「…」
どうやらワドもこのキングには強く出られないらしい。
船員の強弱関係を垣間見た気がしてヒカリは目をそらした。
「ん~?なにやってるの?…あ、お前!!人間!」
「…」
「完全に普通名詞だな」
「今ちょうど星空観察パーティーしてるんだよ!ほんと、運いいなぁお前」
「星空観察パーティー…?」
「ああ。ブルー・マリン星群、綺麗だろ?奥に見えるのが暗黒星雲。唯一の恒星が周りの惑星を照らしてるんだよ」
「あそこに行くんですか?」
「あはは、んなわけねーじゃん。あそことは一兆光年近く離れてるんだぜ?着くまでに何年かかるかなー?ま、超光速移動が可能なら一瞬だけどさ」
「…」
「あ、俺船長!!パーティーゴールド、通称…って言った気がするぞ?」
「…テル、全然説明が」
「ああ、そうなの?そりゃ悪かったねぇ」
「…」
ニコーっと笑ってテルがヒカリの方を向く。
「いい?ワドは俺のものだから」
「…」
「だから、ドン引きしてるぞ」
ワドの冷徹な指摘に怯みもせずにテルは微笑んだ。