☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「なんか、いつもごめんね」
「気にするな。それよりそこの天使」
「おい!?何やその呼び方!?」
「この船に乗せるものはないのか」
「は?」
どこまでも辛辣なワドはウィングに問い掛ける。
そこにテルが口を出した。
「お前気に入ったのー!だからうちのクルーになれよ!」
「いーけどなぁ、俺友達おんねん」
「誰!?誰誰誰誰誰誰!?!?」
「…すまない。今すこしパニクってるようだ」
「わーんそんなつれない君も大好きワードっ♪」
「…さて、その友達の特徴を教えろ。さらってくる。そして出航だ」
抱き着こうとしたテルをさらりとかわして蹴り飛ばし、ワドが言った。
「茶色の髪の目立たん奴や。身長は俺よりちょっと低い位やなぁ…あ、あとスケボー持っとるで」
「分かった。シルン、留守は頼んだ」
「了解です副船長」
ブーツに手袋。
およそこの夏の星には似つかわしくない格好だが、はためくローブを翻すその様は、王子と言ってもおかしくはなかった。
「…来なさい銀髪チャラチャラ男。船を案内してあげる」
「あのな、俺の名前ウィングな!?」
「黙って。私がなびくにはあんたレベルの顔じゃダメだわ」
「あいつ以上になれってか!?」
「さんよ!さ、ん、を、つ、け、な、さ、い!!」
「う、うるせぇこのガキ…」
「何言ってるの!?彼は副船長!!」
「お前は」
「幹部」
「なーる。この弱そうなガキに細い副船長かよ」
「何ですって!?私はともかく彼を馬鹿にしないで!!船長と一緒に大陸一つ消し飛ばしたのに!」
チーンと伸びているテルをよそに二人は大喧嘩。
ちっともそりがあわない。
そうこうしているうちに大乱闘寸前にまで発展してしまい、さすがにテルも起きる。
「仲良くしよーよー(´・ω・`)」
「「うわうぜぇ…」」
ガクーンとわかりやすく落ち込んだテル。
これでは喧嘩の仲裁は期待できない。
「まぁまぁ、二人とも喧嘩しないの」
「あ、キース」
「3時間ぶり、ウィング」
栗毛の癖のない髪質。
おっとりとしているのが丸わかりの話し方と下がった目尻。
これと言って特徴のない顔つきのキースと呼ばれた少年はウィングに親しげに話しかけて、シルンに向き直った。
「これからお世話になります、シルンちゃん」
ニコッと笑った屈託のない笑顔は天使だった。