☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

「なんか、いつもごめんね」

「気にするな。それよりそこの天使」

「おい!?何やその呼び方!?」

「この船に乗せるものはないのか」

「は?」

どこまでも辛辣なワドはウィングに問い掛ける。

そこにテルが口を出した。

「お前気に入ったのー!だからうちのクルーになれよ!」

「いーけどなぁ、俺友達おんねん」

「誰!?誰誰誰誰誰誰!?!?」

「…すまない。今すこしパニクってるようだ」

「わーんそんなつれない君も大好きワードっ♪」

「…さて、その友達の特徴を教えろ。さらってくる。そして出航だ」

抱き着こうとしたテルをさらりとかわして蹴り飛ばし、ワドが言った。

「茶色の髪の目立たん奴や。身長は俺よりちょっと低い位やなぁ…あ、あとスケボー持っとるで」

「分かった。シルン、留守は頼んだ」

「了解です副船長」

ブーツに手袋。

およそこの夏の星には似つかわしくない格好だが、はためくローブを翻すその様は、王子と言ってもおかしくはなかった。


「…来なさい銀髪チャラチャラ男。船を案内してあげる」

「あのな、俺の名前ウィングな!?」

「黙って。私がなびくにはあんたレベルの顔じゃダメだわ」

「あいつ以上になれってか!?」

「さんよ!さ、ん、を、つ、け、な、さ、い!!」

「う、うるせぇこのガキ…」

「何言ってるの!?彼は副船長!!」

「お前は」

「幹部」

「なーる。この弱そうなガキに細い副船長かよ」

「何ですって!?私はともかく彼を馬鹿にしないで!!船長と一緒に大陸一つ消し飛ばしたのに!」

チーンと伸びているテルをよそに二人は大喧嘩。

ちっともそりがあわない。

そうこうしているうちに大乱闘寸前にまで発展してしまい、さすがにテルも起きる。

「仲良くしよーよー(´・ω・`)」

「「うわうぜぇ…」」

ガクーンとわかりやすく落ち込んだテル。

これでは喧嘩の仲裁は期待できない。

「まぁまぁ、二人とも喧嘩しないの」

「あ、キース」

「3時間ぶり、ウィング」

栗毛の癖のない髪質。

おっとりとしているのが丸わかりの話し方と下がった目尻。

これと言って特徴のない顔つきのキースと呼ばれた少年はウィングに親しげに話しかけて、シルンに向き直った。

「これからお世話になります、シルンちゃん」

ニコッと笑った屈託のない笑顔は天使だった。

< 9 / 161 >

この作品をシェア

pagetop