☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「…楽しそうだな」
「あ、ちょうどお前の話をしてたんだよ!!」
「…俺の」
「うん」
よくわかっていないワドに抱き着きかけたテルはあっさりとはねのけられてしまう。
へこまずに幸せそうにしているテルに異常性を感じたヒカリはグッと仰け反った。
「ヒカリさんが引いてるぞ」
「さん付けすることねーだろ?年下だし」
「…」
「そういう問題じゃ」
「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん。…あ、シルン!!いやいや、もう寝るの?」
現れたシルンに軽く会釈を返すとシルンもぺこりとヒカリに向かってお辞儀する。
そのあと改めてテルに向き直って肩をすくめた。
「だって、もう深夜だし。日付が変わりそう」
「なにいい子ぶってんだよ…まいっか。じゃあ寝よっか。はい、(つ∀-)オヤスミー」
「…」
「ワドもおやすみ。無理すんなよ」
じゃ、と手を振っていなくなったテルにシルンが続く。
「おやすみ、ちゃんと休んでね、ワド」
「…」
それには応えず、ワドは軽く頭を下げた。
「おやすみなさいませ」
「ワド…さん?」
「お前の部屋が必要だな。良ければ提供する。嫌ならその辺で…いや、甲板はやめろ。メインルームがいい。あそこなら温度管理が徹底されている」
「…はい。どうも」
「こっちだ」
ワドがヒカリを先導し、船内に入るための扉を開ける。
「わぁぁ…!?」
「…」
さらさらと揺れる草とそよぐ木々、広々とした空間に広がるTHE・ナチュラル。
なんて綺麗なところなんだ、とヒカリが呆然としているうちに入口から一番近い扉をワドが開く。
「どうぞ」
…こういうさりげない紳士的な行動がかっこいい。
「あ、ありがとうございます」
「この部屋は好きなように使ってくれればいい。俺が勝手に片付ける。見られたくないものはそこのタンスにしまっておけ。一応ごみなんかを捨てるときには確認するから何か失くしたら俺に声をかけろ」
そういうこまやかな心遣いがきっとモテる要因なんだろうな。
…船長とかに。
「困ったことがあったら好きに聞いてくれ」
そういってワドは一礼して出て行った。
ヒカリはくるっと部屋の中を見回す。
内装は無難なナチュラル系で、時折リゾート系が混じっている。
「…これは…」
かなりセンスが…いい。
モデルルーム顔負けの内装。
実用性を重視した見事な家具の配置バランス。
すごい、確かに天才かもしれない。
「ワドさんって…何者…?」
ベッドメイキングの施されたふわふわのベッドにもぐりこみながら、ヒカリは目を閉じた。