☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
「俺の部屋」
確かに多少綺麗だ。
その程度の装飾が施された一室の扉の前へ連れていかれたヒカリはそう説明を受ける。
「ワドは安全性を考慮して奥の方の部屋の方がいいって言うんだけどさ、逆に後ろの方だと危ないんだよね」
「袋のネズミ、だからですか?」
テルは一瞬きょとん、としてヒカリを見返す。
どんな顔でも性格でもイケメンはイケメンなのでヒカリはドキッとして俯いた。
「あ、もしかして“コトワザ”?ごめん、何のことかと思った」
「あ、いえ、こちらこそ」
「それと、危ないってのは俺のことじゃねぇよ?なんかあったときにすぐ飛び出せないと困るだろ?」
「あ、なるほど」
「それに…」
ワドのこともあるし。
「納得したら入れよ。いつまで突っ立ってるつもり?」
「あ、ご、ごめんなさい!!」
慌ててヒカリが反射的にぺこっと頭を下げるとテルが苦笑いした。
「謝んなよ、お前も謝り癖あるんだな」
「あやまり…?」
「癖。なんでもねーよ。あんま無意味に謝罪すんな」
変なことで注意するんだな、とヒカリはすみません、というのを何とか変えた。
「あ、は…い…」
「ん、じゃどーぞ?」
そういって開かれたドアの先には…
「んぎゃ!?」
「申し訳ありません」
「びっくりした…掃除?」
「ごめんなさい、食事を抜いたので予定を切り上げて」
「あ、敬語!直せ、つったろ?」
「すみません」
ドアの陰からいきなりワドが現れた。
どうやら開かれたドアにしたたかに鼻をぶつけたらしく、鼻血が出ていたが無理やり抑えて、謝った拍子に垂れた血をかがんでぬぐう。
「ほんと、なおんねーな…」
「申し訳ありま」
「す!いい加減謝ろうとすんのやめろっての」
「はい」
返事はいいんだけどな、とテルは言って、去ろうとしたワドの襟首をとっ捕まえてテルは部屋の中へワドを引きずっていった。
「お前も来いよー」
「…ヒカリさん」
今しがたヒカリに気が付いたかのように、ワドはいつもの無感動なつぶやきを漏らした。