☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-
クリアス=ウィング
「んで、分かってると思うけど昨日の話ね?」
肩をすくめてテルがそういう。
後ろ手にかぎのかけられた部屋にはワドとテルとヒカリ。
生物的にかなり危険な構図ができてしまった。
部屋の中には何故だかスクリーン、繊細な彫刻の施された本だなに、高級そうなソファや、銀食器、紅茶、アルコールの類まで並んでいる。
ヒカリがきょろきょろしていると、テルがああ、と軽く言った。
「内装?高いものばっか買うなって怒ったら自分で作ってさ、ワド自作」
マジか。
ヒカリは目を見張った。
物置を兼ねた本棚は細かな装飾が施されていて、おそらくワドが磨いたのか、暗い照明を受けて輝いている。
ちょっとした芸術家の引退間際の作品だ、とヒカリは思った。
この前行った美術館よりよっぽどすごい。
「…あの、俺が呼ばれた理由が」
「分かりません、ってか?」
「…次はウィングの部屋に行ってクリスタルを磨いてこな」
「いといけませんって?お前あれ毎日やってんの?おっそろしく手間かかるじゃん」
「…ハウスダストが舞」
「ってるから毎日やらないといけないの?ウィングにやらせとけ」
「でも」
「ストップストップ。おっけ、できなかった仕事は無し!!船長命令な!?」
「…はい」
いいたいことをほとんどつぶされた挙句船長命令の行使で強制的にはいと言わされたワド。
職権乱用ってよくわかんなかったけど、今はっきりとわかった気がするヒカリは気の毒そうにワドを見た。
「で、昨日の夜のことなんだけど」
「それは不問にするって言ったじゃな」
「うるさいっての、ちょっと黙れ」
可哀想にワドは膝を折らされ無理やりおそらくふっかふかのソファに座らされた。
「お前、超能力らしきものを手に入れてる」
「えっ!?」
「うーん、ちょっと微妙なとこなんだけど」
いきなり超能力でヒカリはかなり混乱した。
「えっと、スプーンが曲がったり、錬金術みたいなことができたり、予言したり、みたいな?」
「いやぁ?たぶんお前の能力は“完全に気配を消すことができる”ってことだと思う」
テルは悪戯っぽく微笑んだ。