☆Friend&ship☆-季節はずれのモンスーン-

俺もなんだけどさ、ワドって性格というかなんというか、常時神経張りつめてるんだよ。

まあ張りつめてなくてもなんだけど。

基本的に気配とかには敏いわけ。

特に死角になる上下、左右、後ろ側ね。

そこから近づいたらほぼ間違いなく100mくらいで気が付かれる。

あ…もしかしたら銃の射程距離くらいだったら余裕で気づかれるかもしんないけど。

ま、いくら俺でも現場を押さえることは厳しかったんだよ。


「現場って、俺は殺人犯か何かですか」

いつかやらかすとは思ってましたけど。

そういったワドを思いっきりの笑顔のまま後で“お話し”しような、と言って黙らせるとテルはさらに続けた。


分かってるとは思うけど、こいつ結構意地っ張りなんだよね。

体に無茶言って動いてるからたまにぶっ壊れるの。

それのささやかなる抵抗が昨晩。

キング曰く“重度の鬱になりかけだ。手を打たないと手遅れになるぞ”。


「真実薬(ライト・ドラッグ)片手に追い回されたら鬱にもなりたくなります」

ワド君は後で二人っきりでお話ししたいみたいだね、と幸せそうに言ってテルは近くにあったタオルでワドの口をふさごうとした。

「…」

それはもれなく失敗に終わった。


で…お前の話だけど。

お前はどうやら“気配を消す”ことと“近くにいる人の気配を消す”ことができるらしい。

たぶん訓練したら“声を聴く”こともできるようになるんじゃねえかな。

なんか、そういう関係の矯正受けてた?

…ああ、ごめん、21世紀の地球ってまだ超能力とかの矯正ってないんだった…

ん?ああ、超能力ってのは“超視覚”“超聴覚”“超嗅覚”“超味覚”“超触覚”のこと。

要は五感を異常に発達させる矯正を受けた奴の持ってる能力のコト。

ちょっと経って馬鹿でかいリスクと成功確率の低さで人権とか事故とかで問題になったりするんだけど、秘密裏にもみ消されるんだよね…

あ、そんなことはどーでもいいや。

そうじゃないとなると、やっぱし一番の可能性は君が“悪魔法”によってここに連れてこられた可能性が高いかな。

結構レアなケースでさ、お前がこの船に乗れたのとか結構奇跡だよ。

だってあれ、結構無差別だし。

たぶんヒカリちゃん、一生どっかの宗教入った方がいいと思うよ。

へへ、信じてないって?

ほんと、カミサマって不公平だねぇ…

この前ばらばらにすっ飛んで発見された人間の死体、十字架かけてボロボロになった聖書を抱えてたらしいし。

なんかの宗教に入らないと、今度は神様に逆恨みされちゃうよ?

あは、カミサマって怖いからねぇ…


「おい、変なこ」

ん、ワド君お静かに、ね?



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