時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「はい 」
「終わったよ! 」
「はえーじゃん」
「まね」
ソウが荷物を持って立ち上がる。
私も旅行カバンを抱え直した。
ソウが呪文を唱えると、私たちの周りに静かな風が起こった。
風がやむ。
目を開けると、そこは隣町の駅前だった。
「ここで待ち合わせてるから」
「分かった。あ、おにぎり食べる? 作ってきたんだ」
「ん? ああ。サンキュ」
私はソウに、少し大きめのおにぎりを渡す。
私たちは立ちながらおにぎりを頬張った。
食べ終わって一息ついている頃、依頼人さんが来た。
聞くところによると、この町の町長さんらしい。
上品に茶色いスーツを着ていて、白髪の目立つ町長さんは、音霧 優作(おとぎり ゆうさく)さんというらしい。
名前は人を表すって、本当なんだね。
音霧さんは、とっても優しい顔で私たちに微笑んでくれた。
「2人とも、はるばるありがとう。私が依頼人の、音霧です」
「初めまして。尾崎 蒼空です」
「土田 翔真です。よろしくお願いします」
音霧さんは私たちを、町内会館まで案内してくれた。