時代を越えて、恋人になっちゃいました。
「何にもありませんが、どうぞ」
音霧さんは私たちに、冷たいカルピスとクッキーを出してくれた。
カラン、とカルピスの入ったコップと氷がぶつかる音が、涼しげに響いた。
「ところで、ご依頼の内容ですが…」
さっそくソウが本題に入った。
音霧さんは私たちに断ると、1つ奥の部屋に入っていった。
しばらくして戻ってきた音霧さんの手には、青いファイルがあった。
「ここのところ、この町内で多くの子供が行方不明になっているんです。始まったのは、1ヶ月ほど前でした。町の小学校にある生徒の保護者から電話がきたんです。子供が帰ってこないと」
音霧はそう言いながら、手元のファイルを開いた。
開かれたページには、履歴書のような紙が入っていて、男の子の写真が貼ってあった。
名前の欄に「栃木 理央(とちぎ りおう)」と書かれている。
「彼が最初の行方不明者です。学校側はその日の午後3時頃、下校させたと言っていました。しかし、彼の保護者から電話がきたのはその日の午後8時過ぎ。彼の母親は仕事から帰ってきたときに、子供がいないことに気付いたそうです」
音霧さんはそこで1度、口をつぐんだ。
そして、悲しそうに、言葉を繋いだ。
「それから毎日、誰かしらがいなくなりました。歳は6歳から12歳までの小学生のみで男女関係なく、行方不明になっています。今日はまだ出ていませんが、これまでで76人になります。学校は昨日から休校でしたが、1人行方不明になりました」
私たちは顔を見合わせた。
そして私は言った。
「心配しないでください。私たちが必ず、みんなを捜し出します」
音霧さんは立ち上がった。
「ありがとうございます。とにかく、お2人をホテルまで案内します。もし、この町を散策するのなら、私にお知らせください。ご案内します」
私たちは荷物を持って、音霧さんの後に続いた。